翻刻
【右】
承(うけたま)はり度し
[答(こたへ)]虎列刺其他(これらそのた)の傅染病各町村(でんせんびやうかくちやうそん)に入(い)り込(こ)むときは其町村(そのちやうそん)
の衛生委員(ゑいせいいいん)にて郡區戸長(ぐんくこちやう)に力(ちから)お恊(あわ)せ豫防消毒(よばうせうどく)の事(こと)を世(せ)
話(わ)あるべけれども一般(いつぱん)のい人々(ひと〳〵)にて其世話(そのせわ)あるべき廉々(かど〳〵)
の概要(あらまし)を知(し)り且各自(かつめい〳〵)の心得方(こゝろえかた)をも豫(かね)て定(さだ)め置(お)かざえれば
萬一(まんいち)の時(とき)に却(かへつ)て不都合(ふつがふ)の事多(ことおほ)かるべしさて虎列刺病流(これらびやうりう)
行(かう)の時節(じせつ)に若(も)し吐瀉(はきくだし)などありて虎列刺(これら)にまぎらはしき
病(やまひ)にかゝりたらば速(すみやか)に醫師(いしや)にたのみて療治(りうじ)すべし隠蔽(つゝみかく)
してそれ〳〵の手當(てあて)をもなさゞるゆゑ手後(ておく)れとなりて一人(いちにん)の
命(いのち)を失(うし)ふのみならず一町一村(いつちやういつそん)にひろがりて數千人(すせんにん)の難(なん)
儀(ぎ)ともなるなり然(さ)れば隠蔽(つゝみかくし)なく速(すみやか)に醫師(いしや)に頼(たの)みて療治(れうじ)
することは豫防第一(よばうだいいち)の肝要(かんえう)にて若(も)し一人(いちにん)の隠蔽(つゝみかくし)あれば
【左】
町村内百般(ちやうそんないひやくはん)の骨折(ほねをり)も皆水(みなみづ)の泡(あわ)となるものなり昨年(さくねん)など
も其隠蔽(そのつゝみかくし)より俄(にわ)かに傅染(でんせん)して一群一國(いちぐんいつこく)に蔓延(まんえん)し救(すく)ふべ
からざる勢(いきほひ)になりたる例多(ためしおほ)し人々能々心得(ひと〳〵よく〳〵こゝろえ)べきことなり
今其病毒(いまそのびやうどく)を撲滅(うちほろぼ)すべき方法(しかた)の要領(あらまし)を列記(かきの)すること左(さ)の
如(ごと)し
[一]各人皆第一(ひと〳〵みなだいいち)に清浄(せいじやう)と云(と)ふことを忘(わす)るべからず肢體(からだ)は
勿論衣服(もぢろんきもの)、住居(すまゐ)、下水(けすい)、便所(べんじよ)、芥溜等(ごみためとう)まで都(すべ)て洗濯掃除(せんたくさうじ)に怠(おこた)ら
ず能々清潔(よく〳〵せいけつ)にすべし虎列刺其他傅染病(これらそのたでんせんびやう)の毒(どく)は皆不潔(みなふけつ)よ
り殖(ふえ)るものなり殊(こと)に動物類(どうぶつるい)の腐(くさ)れたるものは病毒(びやうどく)には
第一(だいいち)の培料(こやし)となるものと知(し)るべし
[二]各人都(ひと〳〵すべ)て適度(よきほど)を守(まも)り何事(なにごと)も其度(そのど)を過(すご)すべからず日常(つね〳〵)
職業(しよくげふ)とする仕事(しごと)も亦法外(またはうぐわい)に勉強骨折(べんきやうほねお)るべからず