翻刻
【右】
[四]若(も)し焼(や)く能(あた)はざる品物(しなもの)は消毒水中(せうどくすちう)に入(い)れ煑沸(にたゝ)するこ
と一時間(いちじかん)にして後水石鹸(のちみづしやぼん)にて丁寧(ていねい)に洗濯(せんたく)し清水(せいすい)を灌(そゝ)ぎ
て乾(かは)かすべし
[五]若(も)し其家(そのうち)に消毒藥(せうどくやく)なきときは直(すぐ)に近邉(きんぺん)の警察分署又(けいさつぶんしよまた)
は町村役場(ちやうそんやくば)に抵(いた)りて消毒藥(せうどくやく)を乞(こ)ひ其用(そのよう)に共(そな)ふべし
[六]総(すべ)て消毒法(せうどくはう)は病家(びやうか)にては能(よ)く理會(りくわい)せざる人(ひと)もありて
兎角行届(とかくゆきとゞ)かぬものゆゑ衛生委員又(ゑいせいいいんまた)ば醫師(いしや)の指圖(さしづ)に従(よつ)て
丁寧(ていねい)に注意(ちゆうい)すべし但(たゞ)し消毒藥并(せいどくやくならび)に吐瀉物(としやぶつ)の取捨等(そりすてとう)は衛(ゑい)
生委員(せいいいん)にて夫々(それ〳〵)の取計(とりはからひ)ある筈(はづ)なり
[七]此病(このやまひ)は人(ひと)より人(ひと)に傳(つた)ふる一種(いつしゆ)の毒(どく)なれば人々十分(ひと〳〵じふぶん)の
力(ちから)を極(きは)めて成(な)る丈(た)け病人(びやうにん)と健康(けんかう)なる人(ひと)とを引分(ひきわ)け其傳(そのでん)
染(せん)を防(ふせ)ぐことに盡力(じんりよく)せざるべからず故(ゆへ)に今一人(いまいぢにん)の病者(びやうにん)
【左】
あらんに家内残(かないのこ)らず其枕頭(そのまくらもと)を取巻(とりま)き病人(びやうにん)に取付(とりつ)き其吐(そのと)
瀉物(しやぶつ)の消毒法焼棄等(せうどくはうやきすてとう)の事(こと)を等閑(なほざり)にするときは忽(たちま)ち一家(いつけ)
中(ちう)に感染(かんせん)して先祖(せんぞ)の血統(ちすじ)をも絶(たや)すこと近(ちか)くは昨年(さくねん)の例(ためし)
にて知(し)るべきなり
[問(とひ)]若(も)し病者療養届(びやうしやれうやうとゞ)かずして死亡(しばう)したる時(とき)は其取扱(そのとりあつかひ)は如何(いかゞ)
してよろしき哉序(や ついで)に承(うけたま)はり置度(おきた)し
[答(こたへ)]成程虎列刺(なるほどこれら)にて死亡(しばう)したる時(とき)の心得方(こゝろえかた)は他(ほか)への傅染(でんせん)
を防(ふせ)ぐに肝要(かんよう)の事項(ことがら)なり故(ゆへ)に若(も)しかゝる時(とき)は早速衛生(さつそくゑいせい)
委員(いいん)に告知(つげし)らせ其死屍(そのしがい)は成(な)る丈(た)け火葬(くわさう)にするがよろし
其故(そのゆへ)は土葬(どさう)にては如何程(いかほど)に消毒(せいどく)するとも其屍(そのかばね)の腐(くさ)るに
随(したが)ひ自(おの)づと地中(ちちう)に滲(し)み透(とほ)し或(あるひ)は川水井戸等(かはみづいどとう)に流(なが)れ込(こ)み
て再(ふたゝ)び害(がい)を萌(きざ)すべし火葬(くわさう)は其毒(そのどく)を焼拂(やきはら)ひ全(まつた)く清浄(せいじやう)とな