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【右】
すものなれば傅染病(でんせんびやう)にて死(し)したる遺體(なきがら)の如(ごと)きは人(ひと)の為(ため)
にも我(わが)が為(ため)にも火葬(くわさう)にするは至極(しごく)の美事(よきこと)なるべし殊(こと)に
惡(あ)しき病(やまひ)の屍(かばね)は勝手(かつて)の所(ところ)へ葬(はうむ)り難(がた)く改葬(かいさう)することも決(けつ)
して成(な)らざる規則(きまり)なる故(ゆへ)に焼(や)きたる後(のち)の遺骨(ゆここつ)なれば先(せん)
祖(ぞ)の墓地(はかち)に持來(もちきた)り夫婦同穴(ふうふどうけつ)に葬(はう)むることも都(すべ)て望(のぞみ)の儘(まゝ)
なるべし
[問(とひ)]偖虎列刺病(さて これらびやう)に就(つ)き豫防及(よばうおよ)び撲滅(ぼくめつ)することは既(すで)に遺(のこ)りな
く委(くわ)しき解説(ときあかし)を得(え)て誠(まこと)にありがたく覚(おぼ)へたり然(しか)して今彼(いまか)
の一般(いつぱん)の賣藥(ばいやく)てふものゝ中(なか)には一向(いつかう)に信仰(しんかう)すべき服藥之(ふくやくこ)
れなき様(やう)に思(おも)わるれば何乎別(なにかべつ)に豫防(よばう)の助(たす)けをなすべき良(よ)
き名方(めいはう)あらば序(ついで)に吾人庶民(われ〳〵しよみん)の為(ため)に傅授(でんじゆ)して置(お)かれ度(た)し
[答(こたへ)]成程其尋(なるほどそのたづね)も亦餘義(またよぎ)なきことならんされば左(さ)に虎列刺(これら)
【左】
豫防(よばう)の一藥方(いちやくはう)を掲示(けいし)せん抑此(そも〳〵こ)の藥(くすり)は近來欧羅巴各國(きんらいようろつぱかくこく)に
て大(おほひ)に賛用(さんよう)せられし良法(りやうはう)にして虎列刺病(これらびやう)の流行(りうかう)に際(さい)し
て之(これ)を日々飲用(にち〳〵いんよう)すれば大概其傳染(たいがいそのでんせん)を防(ふせ)ぎ得(う)べしと云(い)へ
り我國(わがくに)にても昨年(さくねん)などは各地(かくち)に於(おひ)て之(これ)を試用(しよう)し頗(すこぶ)る奇(き)
効(こう)のあるものたるは畧(ほ)ぼ証明(しやうめい)することを得(え)たり加之其(しかのみならずその)
味(あぢ)は通常市中(へいぜいしぢう)の水廛(みづや)に販(ひさ)げる「レモン」水(すい)の様(やう)なる甘酸(あまずつぱ)の
美(うま)き爽涼水(さうりようすい)にして且(か)つ其價(そのね)も廉(れん)なれば夏節(なつ)などは旁(かだば)ら
飲料(のみもの)として至極妙(しごくめう)なるものなり然(さ)れども其薬品(そのやくひん)の粗惡(そあく)
なるものは宜(よろ)しからざれば成(な)るたけ吟味(ぎんみ)して正(たゞ)しき藥(やく)
舗(ほ)にて之(これ)を購求(かひもと)むべし
〇鹿列刺豫防(これらよばう)の特効藥方(とくこうやくはう)
希硫酸《割書:六滴(むしつく)より|十滴(としつく)まで》極白砂糖(ごくしろさとう)《割書:三匁|》清水(せいすい)《割書:一合|》枸櫞油或(くゑんゆあるひ)は