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コレクション: コレクション3

九死の一生 - 翻刻

九死の一生 - ページ 6

ページ: 6

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【右】 [問(とひ)]然(しか)れば一般(いつぱん)の賣藥(ばいやく)は此(こ)の虎列刺病(これらびやう)の藥(くすり)として一向(いつかう)に効(こう) 能(のう)の之(こ)れなきものと心得(こゝろえ)て宜(よろ)しき哉又近來最有名(や またきんらいもつともいうめい)なる彼(か) の賓丹(はうたん)てふ賣藥(ばいやく)は昨年虎列刺流行(さくねんこれらりうかう)の際(とき)などは夥(おびたゞ)しき賣(う)れ 方(かた)にて町村(てふそん)の人々(ひと〳〵)は其能書(そののふしよ)を信仰(しんかう)して此上(このうへ)もなき良(よ)き豫(よ) 防藥(ぼうやく)と思(おも)ひ込(こ)み居(い)る者多(ものおほ)しとのことなるが是亦矢張一般(これまたやはりいつぱん) の賣藥同様左程(ばいやくどうやうさほど)に効能(こうのふ)の之(こ)れなきものなる哉序(や ついで)に承(うけたま)はり 置(お)き度(た)し  [答(こたへ)]元來政府(くはんらいせいふ)の一般賣藥(いつぱんばいやく)なるものを処置(しよち)するや其効(そのこう)の有(う)  無(む)は絶(たえ)て問(と)わず只猛劇(たゞまうげき)なる藥品(やくひん)を用(もち)ひずして単(たゞ)に危害(きがい)  を醸(かも)す虞(うれひ)なきことを旨(むね)とせり蓋(けだ)し可(か)もなく不可(はか)もなく  毒(どく)にも藥(くすり)にもならざるを良(よし)とするものゝ如(ごと)し然(しか)るを彼(かれ)  等(ら)は官許(くわんきよ)の二字(にじ)を奇貨(きくわ)とし世人(せじん)の知(し)らざるに乗(じやう)じて漫(みだり) 【左】  に牽強附會(こじつけ)の説(せつ)を唱(とな)へ只管(ひたす)ら利(り)をのみ占(し)めんことを力(つと)  むるものなれば如何(いか)でか此(かく)の如(ごと)きの賣藥(ばいやく)を以(もつ)て最劇甚(もつともげきじん)  なる悪疫(あくゑき)を豫防治癒(よばうじゆ)すべきっことあらんや啻(たゝ)に其豫防治(そのよばうぢ)  癒(ゆ)する能(あた)わざるのみならず世人之(せじんこれ)を妄用(ばうやう)して竟(つい)には膓(ちやう)  胃(い)を傷害(しやうがい)し却(かへつ)て悪疫(あくゑき)の侵入(しんにふ)を助(たす)くる如(ごと)きの情態(じやうたい)あるは 實(じつ)に慨(なげ)かはしきことなりされば慈仁(じじん)なる我(わ)が政府(せいふ)は早(はや)  くも此(こゝ)に見(み)るありて人民(じんみん)の賣藥(ばいやく)を妄信(ばうしん)して却(かへつ)て障害(しやうがい)と  なるべきことを懇々諭達(こん〳〵たつ)せられたり其注意(そのちやうい)の厚(あつ)きこと  感(かん)ずべし今此賓丹(いまそのはうたん)と云(い)ふ名(な)を指(さ)しての尋(たづね)に答(こた)ふるは兎(と)  も角(かく)も直(たゞ)ちに人(ひと)の商業(ゑやうばい)にさし響(ひゞ)きを生(しやう)じて甚(はなは)だ好(この)まし  からざることなれば折角(せつかく)の問(とひ)なれども姑(しば)らく茲(こゝ)に之(これ)を  言(い)はず大抵其(たいていそ)の可否(かひ)は人々宜(ひと〳〵よろ)しく自(みづ)から察(さつ)し知(し)るべき