翻刻
【右】
に異(こと)ならず故(ゆへ)に下水(げすい)は時々之(ときときこれ)を洗(あら)ひ流(なが)し決(けつ)して汚芥(ごみあくた)の
瀦(たま)らざる様(やう)に心掛(こゝろが)くべし但(たゞ)し此汚水(このよごれみづ)は酌(く)み取(と)りて両便(りやうべん)
と共(とも)に作物(さくもの)の培料(こやし)に用(もち)ふべし総(そう)じて五穀野菜草木(ごこくやさいくさき)の培(こや)
料(し)に用(もち)ふるものは人身(じんしん)には却(かへつ)て害(がゐ)ありと心得(こゝろえ)べし[五]庖廐(だいどころ)の残棄物即(すたりもの すなは)ち野菜(やさい)の切屑煮滓等(きりくずにがらなど)わ住居(すまい)の接近(ちかま)み
積置(つみお)きて腐敗(くさら)すべからず若(も)し止(や)むことを得(え)ずして家(いへ)の
近傍(ちかく)に積(つ)み置(お)くときは其臭気(そのくさみ)の家中(やうち)に入(い)らざる様(やう)に注(ちゆう)
意(い)すべし
[六]住居(すまゐ)の近傍床下等(ちかくゆかしたなど)には常(つね)に汚水両便等(よごれみづりやうべんとう)の地中(ちちう)に滲込(しみこ)
まぬ様用心(やう ようじん)すべし故(ゆへ)に便所(べんじよ)を作(つく)るには溜壺(ためつぼ)は瀬戸物(せともの)を
用(もち)ふるを良(よし)とす桶樽(をけたる)は早(はや)く朽(く)ち腐(くさ)れて汚水漏(よごれみづも)れ自(おの)づと
住居(すまい)の下(した)に滲(し)み透(とほ)りて空気(くうき)を汚(よご)すものなり
【左】
[七]腐(くさ)りて惡(あし)き臭(か)のある魚類野菜類(うをるいやさいるい)を家内(やうち)に置(お)くべから
ず又培料(また こやし)を貯(たくは)ふる小屋或(こやあるひ)は牛馬等(うしむまとう)の小屋(こや)は成(な)るたけ住(すま)
居(ゐ)より遠(とほ)く引離(ひきはな)すべし
右(みぎ)の如(ごと)く一々(いち〳〵)に列記(れつき)するときは只空気(たゞくうき)を清潔(せいけつ)にする一(いち)
事(じ)のみにても亦其関係(またそのくわんけい)の少(すく)なからざるを知(し)るべし然(しか)れ
ども人々空気(ひと〳〵くうき)の不潔(ふけつ)なるわ百病(ひやくびやう)の本(もと)なりと謂(い)ふことを
能々合點(よく〳〵がてん)して常(つね)に用心(ようじん)の念(ねん)を起(おこ)すときは右(みぎ)の箇條(かでふ)は容(よう)
易(い)に為(な)し得(う)べき事項(ことがら)にして格別(かくべつ)に骨(ほね)を折(お)るにも及(およ)ばず
又多(またおふ)く金銭(きんせん)を費(つい)やすにも非(あら)ず畢竟只人々(ひつきやうたゞひと〳〵)の用心(ようじん)にある
のみ
[問(とひ)]其飲水(そののみみづ)に就(つい)ての用心(ようじん)は如何(いか)なる事項(ことがら)なる哉(や)
[答(こたへ)]吾人(われ〳〵)の平生用(へいせいもち)ふる所(ところ)の飲水(のみみづ)は空気(くうき)に次(つい)で甚(はなは)だ大切(たいせつ)な