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新聞文庫・絵 - 翻刻

新聞文庫・絵 - ページ 11

ページ: 11

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新聞図会 第十号 阿州名東県十五等出仕吉本信治いふ人の家に.雇(やと)【「僱」は「雇」の俗字】ひ女の おつねといふ者は.主人の留守(るす)の戸(と)堅(かた)くろしく.寝(ね)もやらぬ夜に 押入し.一人りの賊(ぞく)は研(と)ぎすます.出刃と眼玉をひからして. 金子出せだせに驚(おどろ)くおつね.わたしは此家の雇人ゆへ.金子の 有所はしらねども.着類は爰(ここ)にと箪笥(たんす)から.出して渡せど 心では.旦那の留守に一と品でも.紛失(ふんじつ)なさばいゝわけなしと. 心もたけき女ゆへ.そつとしら刃をかくし持.とはしら浪の 白痴(しれもの)が.衣類を背負(せをい)出行を.思ひ しれよと切り付しが.賊もすかさず 出刃振り上.しばしか程は戦(たゝか)へど. 女の腕(うで)のかい なさに.すでに 切ふせられんと せしが.近所の人が 聞(きゝ)つけて.かけ付来たる 有様に.賊は品物捨置て.逃 去りしゆへ一と品も.とられざりしは 此おつねが.心がけよき所とて 県庁(おかみ)さまより賞典(ごほうび)を.いたゞきしこそ手柄なりとぞ                       《割書:略誌|画図》笹木芳瀧                          八尾善板