翻刻
【右掛け軸】
(印)精錡【金偏に竒】水
東京銀座 岸田吟香拝(印)
此御目ぐすりは美国(アメリカ)の大医より
直伝(ぢきでん)の名法にして日本国中たゞ
我が一家(いつか)の外(ほか)には決(けつ)して類(るい)なき
妙薬(みやうやく)なり是(これ)まで世間(せけん)にありふれたる
目薬(めぐすり)は何(いづ)れも粘(ねば)りたる煉薬(ねりやく)の類(るい)にて却(かへつ)て目の
害(がい)となること少からず然(しか)るに此 精錡水(せいきすゐ)は澄明無色(すみきり)たる
水剤(みづぐすり)にして実(じつ)に目薬中(めぐすりちう)の第一等(だいいつとう)なる者なれば一切(いつさい)の眼病(がんびよう)に
用(もち)ゐて其 功能(こうのう)の著明(あらた)なるは素(もと)より世人(せじん)の遍(あまね)く知(し)る所(ところ)なり
【左掛け軸】
(印)楽善堂三薬
岸田吟香拝(印)
補養丸(ほやうぐわん)
精根(せいこん)を補(おぎ)なひ元気(げんき)を養(やし)なふの良薬(りやうやく)なり性質(うまれつき)の弱(よわ)き人または
病後(ひようご)産後(さんご)の肥立(ひだち)かねたるによし婦人(ふじん)ちのみちに妙(みよう)なり持薬(ぢやく)として
常(つね)に用(もち)ゆれば一生無病(いつしやうむびよう)にて長命(ちようめい)すること受合(うけあひ)なり
鎮溜飲(ちんりうゐん)
りうゐんの妙薬(みやうやく)なり胸膈(むなさき)を開(ひら)き脾胃(ひゐ)を健(すこや)かにし
食物(しよくもつ)のこなれを能(よく)し腹中(ふくちう)を調(とゝの)へ気力(きりよく)を益(ます)の功能(こうのう)あり食物(くひもの)あぢ
なく常(つね)にむか〳〵として胸(むな)ぐるしく苦(にが)き水(みづ)を吐(は)きなどするに用(もち)ゐて
尤(もつと)も功(こう)あり
穏通丸(おんつうぐわん)
つうじの御薬(おくすり)なり胸(むね)つかへ腹(はら)はり食物(しよくもつ)すゝまず
何(なに)となく心地(こゝち)あしき時(とき)この御薬( くすり)を用(もち)ゆれば忽(たち)まち毒(どく)を下(くだ)し
逆上(のぼせ)を引(き)下げ腹中(ふくちう)を掃除(そうぢ)して気鬱(きうつ)を開(ひら)き
熱(ねつ)を醒(さま)すこと神(しん)の如(ごと)し 千束里の【「か」ヵ】