翻刻
勧善懲悪 官許 錦画新聞【「勧善懲悪」「錦画新聞」は横書き、「官許」は縦書き】
第貳号
大坂第二大区八小区八
幡町三十七番地 赤沢(あかさわ)何
某が妻(つま)おくらはもと川竹(かわたけ)の【「流れ」にかかる枕詞】憂(うき)
ふしに流(なかれ)わたれる者(もの)なれどもう
きたる心(こころ)さらになく竹のすぐなる生(うま)れにて此(この)赤沢(あかさわ)何某が
妻となりても操(みさを)正(ただ)しく千代(ちよ)の行末(ゆくすへ)を契(ちき)れり此頃(このごろ)夫(をつと)病事(やまひこと)
ありて既(すで)に十死一生(じつしいつしよう)の場合(ばあひ)にいたり医師(いし)もさま〳〵手(て)を尽(つく)せ
ども最早(もはや)治療(じりよう)の術(てだて)なしといふお倉(くら)はかくと聞(きひ)てあるにも
あられず【居ても立ってもいられない】夜(よ)な〳〵水(みづ)を浴(あび)み神佛(かみほとけ)をいのりて看病(かんひよう)實(げ)につく
さゞる事(こと)なし其(その)真心(まこころ)天に通(つう)せしにや既(すで)に必死(ひつし)にきわまりたる病(やまい)
気 次第(しだい)に本復(ほんぶく)して此頃(このごろ)全快(せんくわい)せりと精神(せいしん)到(いたる)処(ところ)金石(きんせき)亦(また)徹(とほ)る
と実(げ)に感(かん)ずべき事なり川竹(かわたけ)【近世の上方で、官許以外の遊里】育(そだ)ちのうちにも又かゝる貞婦(ていふ)あり所詮(いわゆる)
泥中(どろうち)の蓮(はちす)とは此(この)おくらをいふべし
笹木芳瀧画
新聞局 《割書:本町四丁目|藤井時習舎》