翻刻
勧善懲悪 官許 錦画新聞【「勧善懲悪」「錦画新聞」は横書き、「官許」は縦書き】
第八号 世の中に何をほり江の三丁目か
きこと積る山川太助が女房せつはおのが名のせつ成る心に迫(せまり)て
や去ル四月廿八日世を宇治川のほとりなるしるべの方へ尋(たづね)ゆき日
をふる雨に水かさ増(ま)す宇治の川づら打 咏(なが)め泡(はう)沫夢幻と仏も
とく浮たる此世にいつ迄か何ながらへんと思ひ絶水の怜(あはれ)や宇治が
わに身を投たるはいかなる故と誰白波に浮沈むを折よくも伏見
第四区なる堀口治助といふ人通りけり此体(このてい)【躰は体(體)の俗字】をみて打驚(うちをどろ)き
急に宇治川に踊入り流(なが)るゝ女を抱きとめ辛(かろ)うじて助け
挙(あぐ)るにはやこと切たれど鳩尾のあたり聊(いさゝ)かぬくみの有
をみて焚(たき)火をなして暖(あたゝ)めつゝさま〴〵と介抱(かいほう)するに未(いまだ)
寿命(いのち)やつきざりけん漸(やうや)くにして蘓生(いきかへり)したり
依(よ)りて其(その)住所を問(と)ひ早速京都府へ
届(とゞけ)しかば京都府より大阪府へ
御 掛合(かけあひ)ありて女は夫へ引
渡(わた)しになり堀口治介
は身捨(みをすて)て女を救(すく)ひ
しを神妙なりとて
京都府にて御賞
詞有て金七拾五
銭賜りしとぞ
新聞局 《割書:本町四丁目|藤井時習舎》