翻刻
官許 勧善懲悪 錦画新聞
第十三号
人の危難(きなん)をみて救(すく)ふは
則 測隠(そくゐん)【惻隠の誤りか?】の心なり大坂
第四大区十二小区 曽(そ)
根崎(ねさき)新地二丁目
鮓(すし)とせい古塚直助(こつか??すけ)【フリガナ?】
の母 隠居(いんきょ)して曽根
崎村にありしに当五月
廿日午前十一時ごろ
ゐん居他出し留 主(す)
をうかゞひ。二人の賊(ぞく)
忍(しの)ひ入り。すでに諸品(しょひん)
をうばい去(さ)らんとなせし
に。 此(この)とき隣家(となり)の川内伊兵ヱ
の妻おそまは。此 物音(ものをと)をきゝつけ
てうち驚(おどろ)き。 抱(ゐだ)きし児(こ)を其まゝ捨置(すておき)
て。 急(きう)にはしり出て。この隠居の本家
なる鮓屋古塚かたへ知(し)らせんと走(はし)るほ
とに 履(はき)ものももどかしとて。 木履(はきもの)を途中
にぬぎ捨て跣足(はだし)にてかけつけ。かく〳〵と
告るより。鮓やの若イ者四人。 手(て)に当る
ものを引提(ひきさけ)て。隠居家にいたり難(なん)なく
二人の賊をとらへ。巡邏の屯所(たむろ)へさしいたし。
物ひとつ盗(ぬす)まれずして事済(ことすみ)たりとぞ。此伊
兵ヱ妻おそまは□ 隣家(となり)の危難に我子の泣
をも厭わず。本家へしらせたる事。隣家の好(よしみ)
かくありたきこと也。依て御上にもそのこゝろざ
しを賞(しやう)せられ。おそまへ金五十銭 彼(か)の鮓屋
の男ともへは。金一円 下(くだ)されしとなり。
時習舎主人述
笹木よし瀧画
新聞局 《割書:本町四丁目|藤井時習舎》