翻刻
勧善懲悪 官許 錦画新聞【「勧善懲悪」「錦画新聞」は横書き、「官許」は縦書き】
第十五号
編輯者時習舎
画図
笹木
芳瀧
三潴県下筑後の国竹野郡石垣村
農夫滝作といへる者二人の娘あり姉(あね)は七歳
妹(いもと)は五歳なるが此二人は近所の畑(はたけ)へ遊びにゆき
芋(いも)や茄子(なすび)をとりたる事 度々(たび〳〵)なれども畑主(はたけぬし)も
子供(こども)の事故と見のがしたれど度かさなれば捨置(すておき)が
たく親の滝作に向(むか)ひしか〳〵と物語(はなす)るに滝作は
立腹(りつぷく)し我子に限(かき)り左様(さやう)の事 決(けつ)してなしと
言(いゝ)つのり終(つい)に喧嘩(けんくは)となり滝作はざん〳〵に
恥(はじ)しめられ無念(むねん)に思ひこんな子が有ればこ
そ親の顔迄よごすなれと人間(にんげん)たるものゝ有る
まじき事か其夜十二時二人の娘をつれて筑
後川の岸(きし)に至(いた)り無慙(むざん)にも川へざんぶりと投(なげ)
こんで我家へ帰(かへ)らんとせしに巡吏(おまはり)に見とがめ
られ終に白状に及び縛(しばり)に付(つき)たりとぞ子に
教(おし)へざるは親の罪(つみ)なるを幼女を殺(ころ)すとは乱心とも
狂人ともたとへがたなきものなりとぞ
新聞局 《割書:本町四丁目|藤井時習舎》