翻刻
勧善懲悪 官許 錦画新聞【「勧善懲悪」「錦画新聞」は横書き、「官許」は縦書き】
第十七号
酒ははかりなし乱(みだす)に及ばずとは
古人の戒(いまし)めされとも多く
酒好は乱に及ばざれば愉快(ゆくはい)
とせず西の宮 濱の町河内
音吉は酒 癖(くせ)あるものにて度〻(たび〳〵)の
乱暴(らんぼう)。父母ももてあまし段々(だん〳〵)の異見(いけん)
に。音吉も禁酒(きんしゆ)する気になり。明日よりは
誓(ちか)ひて酒はのむまじ。今日 限(かぎ)りの禁
酒がため。快(こゝろ)よく一酌(いつぱい)せんとて。母を相手(あいて)
の一合二合。 徳利胸(とつくりむね)の落付(おちつ)く迄と
数升(すしやう)の酒に一升を誤(あやま)る基(もとい)。はや舌(した)も
まはらぬ程にまはされて。始(はじめ)の心どこへやら
例(れい)の如くにぐぜり出す。折から父の帰(かへ)り
来て。此有様に一(ひ)ト言三(ことみ)こと。異見があらそい
始に【「に」の横に「と」】て有あふものを投ちらし。父を打擲(たゝき)母も疵(きづ)を
負(おは)せたる科(とが)により
其身は終(つい)に縄目(なはめ)の
恥(はじ)。当四月より
懲役(ちやうやく)十年
申付られたり
慎(つゝし)むべくは
大酒なりけり
時習舎述
芳 瀧 筆
新聞局 本町四丁目
藤井時習舎