翻刻
大阪日々新聞 二百七十八号
靱辺(うつぼへん)某(なにがし)の妻(つま)でつち一人 連(つれ)て住吉(すみよし)へ詣(もう)でんと
時をたがへて夜(よ)あけず賊(ぞく)
きたりて女をはだかにする
でつちおそれてはたけ中に
ひそむ女 悲泣(ひきう)すれども
外(ほか)に人なし女なればはだか
にてはいづくへも行(ゆき)がたくじ
ひをたれて下帯(したおび)だけ恵(めぐ)み
給へこれは直内(ねうち)かあると
引すてし車の
ほろう与(あた)へるゆへ
女是を得て去る
処へ又一人ぞく来る
今女をはぎてほろう
あたへし事を云ほろうには廿円を
ぬい込(こみ)置(おき)たり衣(い)るいを奪(うば)ふも金を失(うし)なはゞ
そん有(あり)婦人を追(おい)とめんと二人のぞくははしり行(ゆく)あとに
でつちは車の内の衣(い)ふくをくる〳〵と小わきにかい込み
飛(とぶ)が如くに家(いへ)に帰(かへ)り主(しゆう)のつゝがなきをよろこび
両 賊(ぞく)の云し事をいへばかのほろうを見(み)るに
はたして廿円の金札あり夜(よ)の明(あけ)るを
まちて訴(うつた)へければでつちの計(はから)ひ神妙
なりとて賊金はでつちに賜(たま)わりける
頃(ころ)は戌の二月五日也とぞ 柳櫻記
川傳 彫福
茂廣