翻刻
日々新聞
小信改二代
貞信画
綿政板
彫九一
信州(しんしう)佐(さ)
久(く)郡(ごう)岩
村田の町に或(ある)豪家(ごうか)有しが
当一月の末(すへ)夜(よ)剛盗(ごうどう)三人入て
主人及ひ手代両人を斬害(きりころ)し
巨万(あまた)の貨幣(くわへい)を掠奪し其家
を出去んとす然るに当家の番頭商
用にて他行し遅(をそ)く家に帰らんとする時測
らず此三人の賊(ぞく)に出逢(いであひ)恐怖(けうふ)し家にも入ず逃退(にけのか)んと
駈(かけ)出すに追迫(をひせめ)らるゝ如く覚へければ途中松の大木によ
り【?】登り難(なん)を遁(のが)れんとする処に右三人の賊此松の下に来り
て件(くたん)の掠(かす)め取たる金を面々分ち取て竟(つひ)に立去りたるか番
頭 辛(からう)じて家に帰れば家内は右の為体(ていたらく)ゆへに弥(いよ〳〵)騒動(そうどう)云(いわ)ん方なく庁(ちやう)
に出て之(これ)を訴(うつた)へしか番頭夜中に他出せしと有に疑(うたが)ひかゝりさま〴〵
拷問(がうもん)にかゝりけるゆへ大きに身躰(しんたい)労(つか)るれ共いまだ賊を正(まさか)に云ず迚(とても)
責殺(せめころ)さるゝ物ならば云では我身賊に陥入(をちい)るべしと心に思ひけるにぞ
重役(じうやく)の人へ賊(ぞく)はかやう〳〵如此々々(しか〳〵)の人也と見たる処を申し告るに
豈測(あにはから)んや三人の賊(ぞく)はみな是よし有 士族(しそく)の人也しかば皆々(みな〳〵)二度
恟(ひつく)りして終(つひ)に召捕(めしとら)はれ番頭は九死一生(きうしいつせう)を得(ゑ)て助(たす)かりしとかや