翻刻
小信改二代
貞 信 画
冨 士 政 板
ホリ 九 一
大阪府下浦江村 方(かた)の小 使壽造(づかひぢうぞう)が家に明治七年夏の頃(ころ)
有夜強盗(あるよごうどう)二人 押(おし)入り壽造をとらへて村中 有財(ゆうざい)の家に案(あん)
内(ない)せよと罵(のゝし)るに壽造 手早(てはや)く藻切鎌(もきりかま)を携(たづさへ)るを見て
凶賊忽(けうぞくたちま)ち白刀(しらは)を翻(ひらめ)かし切付るを女房(によぼう)ゆきは夫(おつと)を
助(たす)【(け)】んとあせるに甲斐(かひ)も情(なさけ)なく夫は四十年(よそじ)を一 期(ご)として
空(むな)しく一 命(めい)を果(はた)したり倅由松 弟(おとゝ)を連(つ)れ村内
人家戸長(しんかこちやう)の宅迄加勢(いへまでかせい)を触(ふれ)るに
多人数馳(たにんぢうは)せ寄(よ)る間(ま)に賊(ぞく)は逃伸(にけのび)
門辺(かどべ)に倒(たを)るゝ妻(つま)のゆきは最前(さいぜん)
戸口に固(かた)めし一 賊(ぞく)に鉄砲(てつほう)をもて
腹(はら)を撃(うた)れたるよし語(かたり)も果(はて)ず
息絶(いきたへ)たり壽(ながきいのち)もゆきと消(き)へ夫婦(ふうふ)
連(つ)れなる死出(しで)三 途血(づち)で血を洗(あら)ふ
凶賊は天網免(てんこうのが)るゝ事 協(かな)はず間も
なく捕縛(ほばく)せられ斬罪(ざんざい)に處(しよ)せらる
花源記
日々 新聞