翻刻
世の中に貧程【「侱」は「程」の誤用か誤記】つらき物はなしと爰(こゝ)に
阪府東大組塩町一丁目に母と娘と二人
住居(すまひ)の者(もの)ありさせる稼(かせぎ)もあらず
して細き煙だに立かぬる
うち又さらに母は
病の床にふし娘はとや
せんかくやせんと明暮
かなしむ折からに
母は去(さる)る十二月二十七日の夜(よ)
にあはれむべし病苦を忍(しの)びて
家を抜出(ぬけいで) 三休橋より身投して
死(し)せり娘は病人の居(お)らぬに驚(おどろ)きさがしもとめける内母の入水(じゆすい)の
由をきくやいなや其身(そのみ)も共に彼(かの) 橋より飛入しに折ふし通りかゝる
小舟の上に落(おち)たれば船頭(せんどう)あつく介抱(かいほう)して命つゝがなかりしといふ此(この)舩頭は
権(ごん) 兵衛とか云(いひ)し者なりと或(あ)る人の
語(かた)りしまゝ茲に記す
日々新聞《割書:第| 六》
《割書:号》
【紙面下部 中央から左側】
板元
塩町通四丁目
前田喜兵ヱ社中
彫九一
綿政板
小信改二代
貞信画
略文長谷川徳太郎筆記