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新聞文庫・絵 - 翻刻

新聞文庫・絵 - ページ 49

ページ: 49

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日々新聞 第拾三号       小信改二代        貞信画         《割書:心斎はし》          綿政板           彫福刀 泉州佐野市場村なる辻本屋といふ宿屋へ 堺県下の小商人松兵ヱは明治八第三月中旬 一泊せしに下女なるお梅の容麗なるに はや煩悩(ぼんのう)の一念はつし菅笠の すげなきや脚伴の紐のとけ 安きやどふ甲掛のそこいわか らず二朱札の一枚にておれて 汚れる袖の縁間せまき宿に 多人の泊りなればお梅の簪を松兵ヱの あたまへさし是をしるべに忍あわんと ちかひし事を合宿の長兵ヱ 洩(もれ)れきゝはやそれ〳〵の 旅枕道の労れに松兵ヱもよく熟睡の折をゑて 長兵ヱは一計めくらしその簪を我があたまへさしかへ待間うそ〳〵お梅の足音 闇(やみ)にとらへてしばらく語ひ八声のとりに松兵ヱ目覚し宵の 約束(やくそく)のかんざしなくお梅を呼(よん)でたづるに初てこいの的ちがひ 矢竹(やだけ)になつてお梅は罵(のゝし)り果は大声のいさかひとなり一夜流の 水掛論実に珍説笑に絶たり   花源誌