翻刻
紀州周参見村
濱田(はまだ)某の娘まつは
本年十九才心 潔(いさぎよ)き
性質(せいしつ)にて風の
柳のなよやかに
あいてきらはぬ
さゝめ言(ごと)国に有
てもつくまなべ
尻(しり)の早(はや)くも大阪の
今木新田某へ奉公
するより又直になんば村久三良方へ
仲人なしの夫婦中 一重(ひとへ)つまでは肌(はだ)さむしと重(かさね)る
妻の幾重(いくへ)とも数(かづ)さへ定(さだ)めぬ
みそかおばさながら賣女(ばいぢょ)同やうの
しまつに其こと發覚して久三良もうらみはて
追出さんと思へどもさばかりにてはあきたらずと
近辺の若もの六七人もかたらいて濱さきより
小船にひそみまつを呼出(よびだ)しさそい入五六丁
もこぎ出し久三良をはじめとしまつを
なぶりものにすまつは鬼がしまへもつれ
ゆかれんと人こゝちもなかりしに豈(あに)
はからんやおのがこのめる筋なれど
酒ずきも過(すご)せば二日よいのづゝう▲【上段終了】
【下段開始】
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もちずきも
過(すご)せば食もにれ
にてきのおもく
ついに千島新田 葭(よし)の中へ
追あげられて夜をあかし
わが身(み)をくやむは先にたゝず
柳櫻記