翻刻
小信改二代 阿波文板
貞 信 画 森文蔵板
静岡県沼津在推路村の士族鈴木某は去明治八年
より東京へ出て巡査(じゆんさ)を勤めて居しがその妻おのぶと
の【野?】へし花の十九廿年
㒵と心のうつくし
きうへ歌道を
たしなみ夫(おつと)の留
主の一人り寝はいとはず姑女(しうとめ)に
よく孝育(こういく)なし或る日 叔母(おば)がきたりおのぶへ告(つげ)るには夫(おつと)
鈴木は東京にて外に女を貰(もら)ツタといふがナゼ捨て置ノダ
はやく踏(ふみ)出し逢(あつ)ておいでと言われてモシ叔母さま御 戯談(ぜうだん)
おやめそれは少しも怨(うら)みませぬ御身まはりの世話も行届き
また私は御留主を守るは女房の役親を残して行くもいかゞと
貞節美言(うつくしことば)に叔母は言(ことば)をかへさず立帰る跡におのぶは捨がたき心のそこ
意(い)筆とりて
東路に月は照るやと終夜(よもすがら)啼あかしてむ山時鳥 ト
一 首(しゆ)をつらね遠(とを)き夫(おつと)へおくりしは年も若きに感心な嫁では有りませんかと
読売百廿二号に出たり 筆者高田俊二
大阪錦画新話 《割書:第 |十四号》