翻刻
東京日々新聞 八百三拾二号
世の人を救(すく)ふ誓(ちか)ひの網(あみ)の目と漏(もれ)たつもりの兇賊(わるもの)が
浅(あさ)き工(たく)みの浅 草(くさ)寺。 其(その)境内(ぢない)なる
奥(おく)山に茶屋 揚弓場(やうきうば)
鱗次(いゑなみ)の。中に潜(しそ)みて居
たりしを捕(とら)へんものと
査官(やくにん)が。 的(まと)ハはづ
さぬ弓張(ゆみは)りの。月も廿日の
真夜中(まよなか)に踏込(ふみこ)む目先へ白刃(ぬきみ)を振(ふ)り。
手向ひなせしを事ともせず所持(てにもつ)官棒(くわんぼう)とり
なをし勇気凛々威儀揚々(ゆうきりん〳〵ゐぎやう〳〵)。 大喝(たいかつ)
一声(いつせい)をどりこむ。此勢に鼡賊(そぞく)
ども。おのが名(な)呼(よ)ぶ濡鼡(ぬれねづみ)。 猫(ねこ)に
追(おは)れし有様(ありさま)に。
狼敗(ろうはひ)なせ
しぞこゝち
よき
墨陀西岸
温克堂
龍吟誌
蕙斎芳幾
《割書:人形|町 》具足屋 渡辺彫栄