翻刻
東京日々新聞【横書き】 一蕙齋芳幾
頃日専(このごろもつは)ら刊行(おこなは)るゝ。 福澤氏(ふくさはうし)が学問(がくもん)
の進(すゝ)めと題(いへ)る教諭(おしへぶみ)史第八篇の文中に。
一 夫(ぷ)の多妾(たせう)を犯(をか)せるは畜類(ちくるい)なりと論(ろん)ぜ
しも。理(ことはり)なるを此(これ)は之獣(これけもの)の名に因(よ)る熊谷(くまがへ)県下に。
孀婦(ごけ)のおなほが長女(むすめ)のお袖(そで)。 次女(いもと)のお蝶三人と。 輪交(かえ〳〵)
まくら川 越(ごへ)の多賀町に住(す)む滝(たき)次郎。 清(きよ)き流(ながれ)の名にも
似(に)ず放蕩無頼(はうたうふらい)の悪漢(わるもの)なれば。三 婦(ぷ)に姦(かん)する故(ゆへ)をもて親(おや)子 互(たが)ひに
睦(むつ)ましからず。平日(つね)に葛藤(くせつ)の絶(たえ)ざりしが。或時例(あるときれい)の口角(いさかひ)より母を
柱(はしら)に溢(くゝり)つけ。其 面前(めのまへ)に戯(たはむ)れて姉妹(はらから)も亦愉快(またゆくわい)とす。
醜態言語(しうたいごんご)に絶(たえ)たりし人畜生(にんちくしよう)が
挙動(ふるまい)の。官(くわん)に聴(きこ)へて捕(とら)へられ。
入間郡(いるまこほり)の
裁判所(さいはんじよ)へ 轉々堂主人録
一同送致(いちどうおくられ)
たりと
なん