翻刻
【右丁】
を近付ることをいむ又病人の側にて怒りのゝしり喧嘩口論さわ
かしき事を慎むべし病人の火毒を盛にすべからず
二には葷(くん)腥生冷風寒をいむ也是は五幸 韮(にら)蒜(にんにく)葱(ねき)薤(おほにら)山蒜(のひる)
なとのたくひ魚鳥の肉類 水(すい)果(くわ)生(なま)梅桃梨柿 柚(ゆづ)金(きん)橘(かん)粟季
都郎 酸(す)気(み)の有もの豆いり惣して煎(いり)炒(こげ)たるものいむべし
又はしかの出そろい迄は口かわき冷水を好む也受る水を与ふ
べからずぬるき湯を与ふべし多くのむは悪し又発熱
の時決して寒風にあたるは大忌也はしか後も風にあたり
水辺なとへ近よるは尤よろしからずと知べし
【左丁】
三にははしかの初め発熱の時に寒凉の薬を用ること
を忌也又温補の薬を用べからず発表を専一とすべし
是は古老の論有こと也いつれはしかと見定めたるならば老
医をたのみ服薬すべし〇麻疹近くは安永五年に流行
して其後廿八年目にて享和三年に流行す其後此文政七年迄
廿二年目也さすれば年三十歳比の医師は八歳九歳の時にはしか
を見たることなれば名家の子といへとも療治の仕方は習(しゆ)練(れん)なかる
べし六十七十の老医も麻(はしか)は僅(はつか)に両度手かけたるなるべし疱瘡とち
がひ連年なき病ゆへゆるかせにすべからず