翻刻
【右丁】
〇麻疹(はしか)没(ひき)後(ご)遍(そう)身(み)掻(かゆ)痒(かる)ものは風にあたること早き也其手当
を医(い)に任(まか)すべし〇はしかは声(こゑ)かるゝは順病也 疱(ほう)瘡(さう)の瘖(こゑかるゝ)はあ
しく〇はしかは初起に衂(はなぢ)の出るは順なれとも又いつ迄も衂の止
ざるはあしく其手当有べし〇はしかは出より没(ひく)迄二便俱
に秘けつするはよろしからず〇はしか痢(り)するは熱(ねつ)邪(しや)の内(ない)䧟(こう)
する所也没(ひき)しほ又は没(ひき)後(ご)に痢(り)病(ひやう)出るものあり其手当有べし
〇はしか初(しよ)発(ほつ)出(で)に向ふ時 気(き)力(りよく)倦(うみ)つかれ睡(すい)眠(めん)してさめざるは逆(きやく)也
此外に爰(こゝ)にあらはさぬ変(へん)症(しやう)多し良医(ねむけ)に託すべし
一 妊(にん)娠(しん)のはしかは至而(いたつて)大切也 火(くわ)熱(ねつ)甚敷故に墮(だ)胎(たい)し易(やす)し
【左丁】
故に古人も妊(にん)娠(しん)と虚羸(やせたるおとろへたる)の人のはしかをむつかしとす是は
其はつ也妊娠は其(その)胎(たい)よくたもちさへすればよけれとも熱(ねつ)気(き)
大(たい)壮(そう)なればやゝともたもちかねて墮(だ)胎(たい)するは現(げん)前(ぜん)也又あたり月(つき)
なれば譬(たとへ)出(しゆつ)産(さん)有ても大(たい)事(じ)なき訳(わけ)なれども麻疹の発熱によ
つて出 産(さん)有ゆゑに血(ち)をさわかして逆(きやく)上(じやう)す既(すで)に産(さん)婦(ふ)は側(そば)の
さわかしき音(おと)にさへ血の道(みち)が発(おこ)るものなるに増(まし)て況(いはん)やはしかの
大熱は焚(やか)るゝが如く打(うち)槯(くたか)るゝ如くの苦(くるし)みなれば血(ち)のおさまる
べきやうなし依_レ之名医妊娠のはしかのことを苦(く)心(しん)して
手あて種々の奇方を考(かんかへ)あり予年六十四歳 麻疹(はしか)