翻刻
【右丁】
両度流行にあふて例(ためし)見るに妊(にん)娠(しん)虚(きよ)労(らう)の輩(ともから)多く死亡せり出生
の子は安体なるもの多し麻疹は疱瘡と違ひ二十年或は三
十年を隔(へだて)て流行するゆゑに中(ちう)年(ねん)の輩(ともから)は医(い)者(しや)も護調(かいほう)人(にん)
もことなれざるゆゑに手あても聢(しか)と治定したる人 稀(まれ)なり
一はしか没(おさま)りに遅(ち)速(そく)ありはしか出て三日を過て収(おさま)るあり
四五日にして収るあり又は五七日にして漸く没ものあり是
其人の性分によるにやからの書(しよ)にも西北の地は水土 剛勁(はけしく)
人のむまれつき厚(あつ)ふしてはしかの透表(いつる)も遅(おそ)し東南の
人は風気 柔弱(やわらか)してはしかの出るも早し左(さ)も有べき歟
【左丁】
一はしかの後に小瘡を発する事あり是は生(ま)水(みつ)にて手洗(ちよふず)
浴すること甚早きによつて也水気が肌(はだ)腠(へ)へ畄泊して毒
を発する也 荊(けいがい)防(ぼう)艾葉(よもぎ)の煎陽を以て洗ふべし
麻疹(はしかの)異(い)名(めう)
唐以上◦傷寒斑瘡◦天行発斑◦温病発斑◦温毒発斑◦景岳
全書云蘇松に在ては◦沙子といひ渐江に在ては◦醋子といひ山陜
に在て◦膚瘡◦赤瘡といひ北直に在ては疹子といふ◦又糠瘡◦
麩瘡〇本邦にて古書に◦麻子瘡◦赤班瘡◦斑瘡◦赤疹◦赤疱
瘡◦稲(イナ)目(メ)瘡(カサ)◦亜(ア)加(カ)謨(モ)加(カ)沙(サ)◦巴(ハ)斯(シ)加(カ)◦意(イ)納(ナ)速(ス)利(リ)なとの名あり