翻刻
【右丁】
一はしかといふ名は右の前の如く稲(いな)の芒(のぎ)麦(むき)の芒(のぎ)をはしかといふ也
稲芒(いねのゝぎ) 麥芒(むぎののぎ) 稲(いな)穂(ぼ)麥(むき)の穂(ほ)ともに芒(のぎ)
をはしかといふ
芒(のぎ)とは穂(ほ)の先の毛(け)をいふ也又尾州の名(な)古(ご)屋(や)にて糠(ぬか)をはしか
といふ五畿内及西国にて物のいら〳〵することをはしかといふゆへ
喉(のんど)のいからきをもはしかをいふ麻疹(はしか)の初め喉(のんど)はからき心(こゝ)地(ち)するを
以てはしかといふなるべし又 啚俗(いなかもの)の(。)芒(のけつ)ほい。はしかほい。いからほい
なといふおもひ合すべし
〇又方 麻疹(はしか)流行する前より朝夕 服(ふくせば)_レ之(これを)或は免(まぬか)れ或は軽(かる)し
【左丁】
緑豆(やへなり) 赤小豆(あつき) 黒(くろ)豆(まめ)各等分 甘艸少但 ̄シ薬の如くせんじのむべし
〇又方 正月用ゆる屠(と)蘇(そ)散(さん)をせんじ服して妙也
〇又方 麻(あさ)の葉(は)を採(とり)て塩(しほ)を少し入(いれ)雷(すり)鉢(ばち)にてすり湯(ゆ)に
和(くわ)し沐(ゆかみ)すべし若(もし)冬月(ふゆ)ならば麻(あさ)苧(を)一(ひと)結(ゆい)に生(せう)姜(が)の葉(は)を
入 煎(せん)じ沐すべし又 茗(めう)荷(が)の葉を入てもよし麻疹をのが
る事妙也又 病(やむ)といへども至て軽し但 ̄シ はしかの流行前にすべし
右の外に麻疹(はしか)の咒術(まじなひ)奇(めう)薬(やく)多しといへども其(その)性(せう)分(ぶん)時(じ)運(こう)
によつて服(のむ)薬(くすり)食(くい)物(もの)等万一 誤(あやま)りて害(がい)を生(しやう)づる事(こと)多(おほ)
ければ一々不_レ出_レ之何事も功者なる医(い)師(しや)に向合すべし