翻刻
【右丁】
一痘瘡 軽重(けいぢう)共に風寒(ふうかん)を能(よく)いとひ穢(けかれ)不浄(ふじやう)を忌(い)む事 肝要(かんよう)也
一疱瘡に望(のぞ)みて妙薬(めうやく)呪術(まじない)一角(いっかく)〇サフラン〇テリヤアカの類 容易(ようい)に
用ゆべからずもし又 用(もちい)んと思ふならば良医(よきいしや)に相談(さうだん)の上用ゆべし其
症(しやう)の順逆(じゆんぎやく)とても素人(しろと)にては分(わか)りかたきものなればゆるかせにすべからず
一痘瘡は婦人(ふじん)経水(けいこう)の穢(けがれ)并に産婦(さんふ)の穢を大にいむ也 乳母(うば)傍人(かいほうにん)
等右の用心有へし又 匂(にほ)ひ袋(ふくろ)等をいむべし
一 僧徒(そうと)巫祝(ふしゆく)祢宜(ねぎ)山伏(やまふし)の輩(ともがら)を臥床(ねま)へ入るを忌(い)む也其他 喪服(もふく)墓(はか)
所線(しよせん)香抹香(かうまつかう)等に触(ふれ)近付(ちかつき)たる人をいむべし
一 沈香(ちんこう)。蒼術(さうじゆつ)。艾葉(がいよう)。柊(ひらき)。鳳尾焦(そてつ)等を焚くべからす又 塩(しお)肴(さかな)鰯(いわし)干魚(ひもの)
【左丁】
の類 焼(やく)臭氣(にほひ)をいむ也〇疱瘡は軽重ともに始より十二
日の間 襯着(はたぎ)を取替(とりかく)ることを忌む也又 襁褓(むつき)を能(よく)結(むす)び置(おく)べし
裾(すそ)より風寒(かぜ)の入ことを嫌ふ又むつきなとも炬燵(こたつ)にてあたゝめ
置取かへてよし透風(すきかせ)を能いとふべし
一三四五歳の小児痘瘡に望みむつかり外(そと)へ出(で)たるものあり外(そと)へ
抱かゝへ出る甚悪し臥床(ねま)にてすかして機嫌(きげん)を取 静(しつか)に遊(あそば)せるを
よしとす疱瘡は陰病(いんびやう)ゆゑ静(しつか)なるを肝要(かんよう)とす傍人(かいほうにん)負(おぶ)ひ
ゆすぶりて躁(さわが)すこと尤も嫌ふ也 躁(さわが)せは驚風(きやうふう)を発するものあり
一 疫癘痘(ゑきれいとう)とて悪所(あしきところ)より伝染(てんせん)したる疱瘡(ほうとう)一種(いつしゆ)あり往々に生症