翻刻
進(しん)ぜる。是(これ)は御前(ごぜん)の思(おぼ)し召(めし)。とはいへわしが骨折(ほねをり)で。まうし請(うけ)たもお前(まへ)が恋(いと)しさ。その心(こゝろ)
根(ね)を汲(くみ)とつて。呉(くれ)ても宜(よい)ではあるまいか。トいふに浅香(あさか)は顔反(かほそむ)け。傍(かた)へをみれば千両箱(せんりやうばこ)。これ
は。夢(ゆめ)かと了得(さすが)に仰天(ぎやうてん)。その腹立(はらたち)も何処(どこ)へやら。失(うせ)て莞爾(につこり)〽これはまア。正真(ほんとう)かエトいはせも放(あへ)ず
〽ほんの嘘(うそ)のと其(その)やうに。疑(うた)ぐり深(ふか)いも程(ほど)があるト蓋(ふた)うち開(ひら)けば山吹(やまふき)の花(はな)の露(つゆ)そふ
出出(ゐで)ならで。たまげ果(はて)たる斗(ばか)り也。当下(そのとき)佐栗(さぐり)はすり倚(よつ)て〽なんと何様(どう)じやト浅香(あさか)が膝(ひざ)を。
とんと敲(たゝけ)?ば其儘(そのまゝ)に佐栗(さぐり)にひたと抱(いだき)つき〽斯(かう)いふ実(じつ)のあるお方(かた)とは。今(いま)までしらぬ盲目(めくら)も
同然(どうぜん)。一回(いちど)なりとも吉光(よしみつ)さまの。お寝間(ねま)を穢(けが)しお情(なさけ)を。うけたは冥加(めうが)と申すもの。腹(はら)を立(たつ)た
は了張(れうけん)ちがひ。是(これ)から申 佐栗(さぐり)さん。女児(むすめ)もをらぬ独住(ひとりずみ)。不便(ふびん)をかけて下(くだ)さりませト実(げ)に惚薬(ほれぐすり)は
佐渡(さど)が嶋(しま)より。出(で)るのが一番(いちばん)利道(きゝみち)と。川柳(せんりう)点(てん)も虚(うそ)ならぬ。佐栗(さぐり)は心(こゝろ)に仕(し)すましたり。少(すこ)し
萎(すが)れし花(はな)ながら。いまだ色香(いろか)も滅(きえ)うせず。殊(こと)に仕(し)こなし如在(ぢよさい)なく。また開中(かいちう)の味(あぢ)と
いひ。多(おほ)く得(え)がたき年増女(としま)の手取(てとり)。興(きよう)ある事(こと)に思(おも)ひツゝ。そのまゝ直(すぐ)に口(くち)と口。チウ〳〵吸(すへ)ば舌(した)
の根(ね)の。限(かぎり)を出(いだ)して快(こゝろ)よく。吸(すは)せながらに手(て)を伸(のば)し。佐栗(さぐり)が股(また)へさしいるゝ。当下(そのとき)佐栗(さぐり)が一物(いちもつ)は。