翻刻
甲斐(かひ)なき桃代(もゝよ)が身(み)。人(ひと)を呪咀(のろふ)ば穴(あな)二ツと。いふも承知(しやうち)で奥庭(おくには)へ。夜更(よふけ)て一人(ひとり)の物詣(ものまうで)。それをお前(まへ)
に見付(みつか)つたは。協(かな)はぬ験(しるし)の糠(ぬか)に釘(くぎ)。たとへ庁所(やくしよ)へ拽(ひつ)れりと。さのみ厭(いと)ひはせぬけれと。まんざらに憎(にく)
い。女子(をなご)ぢやと。思(おぼ)さねばこそ玉章(たまづさ)の。数(かず)さへ送(おく)り給はりし。そのお心(こゝろ)の替(かは)らずは。今(いま)はどうなと
吾儕(わたし)が身(み)は。お前(まへ)任(まか)せにするほどに。何卒(どうぞ)この場(ば)は見遁(みのが)してト睨(ながしめ)にして蔀(しとみ)が顔(かほ)を。みツゝ
も歎(なげ)く俤(おもかげ)は。雨夜(あまよ)の月(つき)に梅(うめ)が香(か)の。匂(にほ)ひこぼるゝばかりなるに。蔀(しとみ)はかねて浮岩(あこがれ)て
送(おく)る文(ふみ)さへそのまゝに。うち返(かへ)さりし腹(はら)たゝしさ。折(をり)もかなと思(おも)ふに僥倖(さいはひ)。かゝる容子(やうす)をみ
にければ。疫(えやみ)の神(かみ)で敵(かたき)を撃(うつ)と。世(よ)の諺(ことわざ)にいふごとく。かく厳(きび)しくは威(をど)すものから。掻口(かきく)
説(どか)れて忽地(たちまち)に。魂(たましひ)天外(てんぐわい)に飛(とび)さりつツゝ。左様(さう)いふお前(まへ)の心(こゝろ)なら。何(なん)で吾儕(わたし)がこの事を。人(ひと)に洩(もら)し
て難義(なんぎ)をかけう。いよ〳〵左様(さう)なら今(いま)こゝでと。抱(いだ)きよせて口(くち)を吸(すへ)ば。桃代(もゝよ)も蔀(しとみ)が衿(えり)へ手(て)を
かけ。しめ付(つけ)て口と口。しばしは互(たがひ)に詞(ことば)もなし。暫(しばら)くあつて押(おし)こかし。其侭(そのまゝ)ぐつと割(わり)こめば。太(ふと)り
肉(じゝ)なる桃代(もゝよ)が陰門(いんもん)。ふくれあがりて紅舌(さね)低(ひく)く。その肌(はだ)ざはり艶麗(すべ〳〵)として。えもいは
れぬ心地(こゝち)になり。蔀(しどみ)は急(せき)たち大(おほ)わざ物(もの)を。づぶ〳〵と押(おし)こめば桃代(もゝよ)は久(ひさ)しく遠(とほ)ざかり。男(をとこ)ほし
下ノ九