翻刻
さに開中(かいちう)も。疼痛(うづく)ばかりの。折(をり)なれば。飽(あく)まで太(ふと)く逞(たく)ましき。大物(たいぶつ)を押(おし)こまれて。たゞ
フウ〳〵と息(いき)をはづまし。夢中(むちう)になりて嬌(よが)り出(た)し。絶(たえ)も入なん在(あり)さまに。蔀(しとみ)は日来(ひごろ)したひ
ぬる。ことにしあれば是(これ)もまた。更(さら)に前後(ぜんご)正体(しやうたい)なく。すかり〳〵と突立(つきた)て。ぬきもやらずに二ツ
玉(だま)。双方(さうはう)の陰水(いんすゐ)は。四(よ)ツの股(また)に溢(あふ)れ滴(したゝ)り。びちや〳〵ぐちや〳〵ずぼ〳〵と。たれに心(こゝろ)もおく
庭(には)の樹立(こだち)の他(ほか)に聞人(きゝて)なしと。心(こゝろ)弛(ゆる)して声(こゑ)をたて。余念(よねん)なくこそみえたりけれ
第十二 祝言(しゆうげん)のまき
室町御所(むろまちごしよ)の御連枝(ごれんし)なる。斯波捨若丸(しばすてわかまる)の奥御殿(おくごでん)。御次(おつぎ)御婢女(おはした)うち交(まじ)り。箒(はき)けはいとり〴〵
に。雑巾(ざふきん)がけの拭(ふ)き掃除(さうぢ)。三ン人よれは姦(かしまし)と。世話(せわ)にもいへる。女(をんな)の口々(くち〳〵)〽室町(むろまち)さまは美(うつく)しい。よい刀祢(との)
さまじやと噂(うはさ)は聞(きい)ても。竟(つひ)にみあげた事もなし。明石(あかし)さまは御僥倖(おしあわせ)。ノウ小蝶(こてふ)どのわたしら
も。何時(いつ)がいつまで御奉公(ごはうこう)。夫(それ)よりか御暇(おいとま)とり。よい良人(ていし)をもち孩児(やゝ)でも産(うん)だら。さそ嬉(うれ)しい
事であろ〽ヲヤ〳〵お前(まへ)は明石(あかし)さまの。今宵(こよひ)の御婚礼(ごこんれい)が羨(うらやま)しさに。急(きふ)に良人(ていし)を持気(もつき)におなりか
ホンニ夫(それ)といへばアノ明石(あかし)さま。御年(おとし)こそお十六なれ。まだねつからな孺子(ねゝ)さんで。お形(なり)も小(ちい)さしあれでも