翻刻
勢(せ)が頬(ほう)や口(くち)の端(はた)をべちや〳〵と甞(なめ)まはしその可愛(かあい)き事 喩(たと)へんかたなく
一生懸命(いつしやうけんめい)にだきしめれば。音勢(おとせ)もこのとき開中(かいちう)がむづ痒(がゆ)きやうに覚(おほ)え。何(ど)
処(こ)となく気持(きもち)よければ思(おも)はず道足(みちたる)が首筋(くびすじ)を両(りやう)の手(て)でしめつけ〳〵
《割書:フウ〳〵| ハア〳〵》息(いき)づかひ。せわしくなれば道足(みちたる)ははや少(すこ)しも堪(こら)えられず頓(やが)てドキン〳〵
ドク〳〵〳〵と樽(たる)の吞口(のみくち)抜(ぬい)たるごとく腎水(じんすゐ)子宮(こつぼ)へはぢけかけ。アゝ〳〵ムゝ〳〵と夢中(むちう)の驕(よが)
り。当下(そのとき)浅香(あさか)は兎(と)やあらんと抜足(ぬきあし)をして隔紙(からかみ)の。外(そと)へ来(きた)りつ身(み)を倚(よせ)かけ。
耳(みゝ)を澄(すま)して動静(やうす)をきくに。思(おも)ひの外(ほか)に出来(でき)たやうす。道足(みちたる)がグウ〳〵スウ〳〵
嬌(よが)るを聞(きい)てあぢな気(き)になり。年(とし)は取(とつ)ても永(なが)き年月(としつき)。一義(いちぎ)強(たえ)たる陰門(いんもん)へ。たち
まちびしよ〳〵湿(しめ)り気(け)出(で)て。湯具(ゆぐ)さへ濡(ぬる)るばかりなれば。何(なん)となく上気(じやうき)して。
耳(みゝ)も真赤(まつか)になるばかり。はやその内に道足(みちたる)は。紙(かみ)をとつて拭(ふ)き方を。教(おし)えなど
するやうすに。はや是(これ)までと徐々(そろり〳〵)。おのれが子舎(へや)へ帰りゆく。音勢(おとせ)はかねて噺(はなし)にも
きゝ。其(その)身(み)も何時(いつ)ぞ交合(して)みたいと。思(おも)ふ心(こゝろ)はありながら。たゞ枕絵(まくらゑ)でみたばかり
上ノ六