翻刻
隨喜(すいき)の涙(なみだ)を流(なか)し 《割書:隨喜(ずいき)とはずい行(いき)の|中略(ちうりやく)の詞(ことば)なり》
参詣群集(さんけいぐんじゆ)は昼夜(ちうや)を分(わか)ず。両 国橋(ごくはし)の
前後(ぜんご)に。取 廻(まは)したる商(あきな)ひ店(みせ)は錐(きり)を
立べき寸地(すんち)もなし。夜の内から詰懸(つめかけ)る
日(につ)参の挑灯(てうちん)は。星(ほし)の地上(ちせう)に降(くだ)るかと
うたがふ。幾(いく)世餅の甘(むま)きは。安養(あんよう)浄土(じやうど)を
思(おも)はせ。淡(あは)雪の軽(かろ)きは。名(な)と倶(とも)に罪障(ざいしやう)
消滅(せうめつ)し。牛(うし)に引(ひか)れての。口上(こうぜう)聞(きゝ)入る
人あれば。茶屋(ちやや)の娘(むすめ)に涎(よだれ)を流(なが)す人
有り。乗合(のりあい)は弘誓(ぐぜい)の舟(ふね)を移(うつ)し。船頭(せんどう)の
日(ひ)にやけたるは。金色(こんじき)の膚(はだへ)かとおもふ
西瓜(すいくわ)の裁売(たちうり)は。蓮(はす)の台(うてな)の形(かたち)をなし
真桑瓜(まくわうり)は。如意宝珠(によいほうじゆ)の俤(おもかげ)あり。冷麦(ひやむぎ)の
永(なが)き未来(みらい)をたのみ。山猫(やまねこ)の切(きり)の短(みじか)きを