翻刻
恨(うら)む。菅笠(すげがさ)日傘(ひがさ)預(あづか)りましよ。内陣(ないぢん)は
込(こ)み合(あい)ますとの声(こへ)は。三途河(さんづがは)のお婆(ばゝ)
やらんと怪(あや)し。軽業(かるわざ)を見ては。肝(きも)を
釣(つる)し上(あげ)。千年(せんねん)土龍(むぐら)に長生(ながいき)をおもふ
太平(たいへい)の飾物(かざりもの)に。武恩(ふをん)の難有(ありがたき)を覚(おぼ)へ
又とんだ霊宝(れいほう)に腥(なまぐさ)坊主(ぼうず)の謂(いわ)れを
知(し)り。四季(しき)を分(わか)つ。からくりは。水(みづ)の流(ながれ)と
人(ひと)の行末(ゆくすへ)有(ある)が中(なか)に。花色(はないろ)の大 幟(のぼり)に
おにむすめと染(そめ)貫(ぬき)し。看板(かんばん)に偽(いつはり)なし
赤(あか)い挑灯(てうちん)に。鬼(おに)の字(じ)を付(つけ)しは。鬼灯(ほうづき)
挑灯(てうちん)是(これ)なんめり。つゝしんで鬼娘(おにむすめ)が
監觴(らんじやう)を尋(たづね)るに。天(てん)からも降(ふ)らず地(ち)からも
湧(わか)ず吾(わが) 日本(につほん)伯耆(ほうきの)国(くに)大千山(だいせんざん)の麓(ふもと)
風流(ふる)の郡(こをり)。多佐江村(たさゑむら)。太次兵衛が娘(むすめ)お松(まつ)と