翻刻
乾魚(ひもの)で茶漬(ちやづけ)喰(く)ふ間(ま)に。いつしか
五つとかぞへ来(き)て。隅(すみ)から隅(すみ)まで。五月(さつき)
下旬(げじゆん)は。われも〳〵と豆蒔(まめまき)のやつさ
もつせ。水無月(みなづき)の朝?日は氷室(ひむろ)に
あらぬ雑煮餅(ぞうにもち)。してやんしてどふした
訳(わけやら)。白髪のはへた爺婆(ぢゝばゝ)も呪(まじない)じや
からけつちでせい。アイな。アヽあいなアと
正月の御(を)とりこし。長生(ながいき)せうとの慾(よく)
心(しん)はお婆(ばゝ)さんかいなと誹(そし)るもおかし
かく慾深(よくふか)き世の中の金銭(きんせん)と救(すく)ひ
とらんとて。かの信濃(しなの)なる開帳(かいてう)の親(おや)玉
四十年 振(ぶり)でのかへり咲(ざき)花(はな)のお江戸の
大賑(にきわ)ひ。極(ごく)楽の芝居(しばい)へずい行の
御印(ごいん)文を出し給ふ。貴 賤(せん)老若(らうにやく)は