← 前のページ
ページ 1 / 1
次のページ →
翻刻
泪(なみだ)如来(によらい)の損像(そんぞう)《割書:山の宿聖天町にて|有頂天(うてうてん)五十日の間開帳》
そも〳〵かりにあんじしたてまつるはしなのゝくに【信濃国】ぜんくわうじ【善光寺】の
ほんぞんほつこく【北国 注④】でんらいしまおうごん【紫磨黄金 注③】の
なみだによらいのそんぞうなりその
むかしてれんてくだ【手練手管】うそ八百だいの
みかどけいせい【傾城】てんわうのおんとき
なまづだいじん【鯰大臣】のまつしや【末社】やけのやんはちと
いへるものこのそんぞうにあつくなり
ちうやあゆみをはこべ
ともごりやく【御利益】なきを
いきとふり【憤り】たゝらを
ふませておはくろ
とぶ【お歯黒どぶ、吉原周囲の堀のこと】へなげこみしを
わかひものとんだどしみつ【本田善光(ほんだよしみつ)のもじり 注⑤】
やう〳〵ひきあけまいらせてせなかに
おぶひたてまつりのろまのくにはなげ
むらなるおきやくさんうねぼれじ【自惚寺】へつれ
まいらせしばしかりねのおんちぎりあさ
からずこれによつてこのたび山のしゆく【宿】
せうでんてう【聖天町、注①】をおんかりや【御仮屋】としてかいてう【開帳】し
たてまつりぼんぶけちゑん【凡夫結縁】のために
おとびらをひらきぼんのう【煩悩】ほたい【菩提】を
によき〳〵とおやかし【生やかし=大きくする】たてまつるもの
なりひとたびはいする【拝する】ともがら【輩】はたいへいの
ぢしんをゆらせうつき【鬱気】をさんじ【散じ】みらいは
かならずひとつはちすのうてな【注②】でくらしうてうてん【有頂天】へ
のぼりてまんざいらく【萬歳楽】ねのたのしみにじゆめう【寿命】の
はなげ【鼻毛】をのばすことうたがひなしごしん〴〵【信心】の
おんかたは一ぶもつてとこへまはられませう
【注① 「ぜうでんつう」と読めるがせの濁点は汚損によるものと別本より判定】
【別本 石本コレクション】
【https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/ishimoto/document/79236a7c-6afe-4373-b3ae-ed46005bf7fe】
【注② 「はちすのうてな」は蓮の台で、極楽浄土に往生した者が座るという蓮の花の座のこと】
【注③ 紫色を帯びた純粋の黄金。最上級の黄金をいう。】
【注④ 新吉原は江戸城から見て北側なので北国とも俗称された】
【注⑤ 本田善光(ほんだよしみつ)は善光寺の開基と元となった人物】
【阿弥陀仏が水の中から飛び出してきて、本田善光の背中におぶさったとの伝説あり】