翻刻
けれバともかうも【=ともかくも】冝様(よきやう)にといふに早速(さつそく)其用意(そのようい)して
祝言(しうげん)も色(いろ)なほしもすミてはや床入(とこいり)になりけれバ
錦(にしき)の夜具(やぐ)に九次郎(くじらう)ハ寐(ね)ころぶ間(ま)もなく女子(をなこ)ども
させ子をともなひ屏風(びやううぶ)のそば御(ご)きげんやうと立(たつ)て行(ゆく)
跡(あと)にさせ子ハはづかしく惚(ほれ)てハ居(ゐ)れどうい〳〵しく
なんといふたらよからふと雪(ゆき)よりしろき㒵(かほ)ばせ【顔馳。顔つき】に
ぱつとちらせし薄紅梅(うすこうばい)新枕(にいまくら)とぞ知(し)られたり九(く)
次郎(じらう)ハ手を取(とつ)てさァお這入(はいり)と夜着(よぎ)のうち思(おも)ハず