翻刻
させ子(こ)を犯(とぼ)して跡(あと)で今朝(けさ)帰(かへ)りがけ書(かい)て来(き)たとて其手(そのて)を
喰(くら)ふ甞(なめる)ならず《割書:九》〽こりや御疑(おうたが)ひの深過(ふかすぎ)るあの探幽(たんいう)の鳩(はと)の画(ゑ)が
手本(てほん)無(なく)して書(かヽ)るべきか昨日(きのふ)出懸(でがけ)に書(かい)たる證拠(しようこ)ハ筆意(ひつい)を能(よく)〻(〳〵)
御覧(ごらん)あれと言(い)ハれて甞(なめる)ハ虫眼鏡(むしめがね)に是(これ)を写(うつ)して見(ミ)る処(ところ)が
実(じつ)に其場(そのば)によく〳〵見(ミ)て写(うつ)し取(とり)たる證拠(しようこ)とすべき筆意(ひつい)墨(すミ)
継(つぎ)寸分違(すんぶんたが)ハず成程(なるほど)感心(かんしん)九次郎(くじらう)どの是(これ)にて疑(うたが)ひすつ
ぱり晴(はれ)た然(され)バ是(これ)より計策(けいざく)のすつぱり行(ゆき)し祝(いハ)ひ酒(ざけ)とそこ〳〵
床(とこ)を畳(たヽ)ませて手早(てばや)く手洗(てあら)ひ口(くち)そヽぎ朝(あさ)より酒宴(しゆえん)を催(もようセ)バ
てしま十九