翻刻
じ遣(や)り猶又(なほまた)竒薬(きやく)を尋(たづぬ)る時(とき)九次郎(くじらう)ハ本町(ほんちやう)河岸(がし)なる獅子(しヽ)の
看板(かんばん)といふ薬(くすり)を聞出(きヽいだ)して是(これ)を咄(はな)すに甞(なめる)大(おほい)によろこびつ
早速(さつそく)九次郎(くじらう)を買(かひ)に遣(や)りけりこヽに又(また)させ子(こ)が方(かた)にハ早(はや)諸(しよ)
道具(どうぐ)の整(とヽの)ひていざといふ時(とき)甞(なめる)が病氣(びやうき)に日延(ひのべ)となれバさせ子(こ)
ハ勿論(もちろん)両親(ふたおや)までも氣(き)を揉(もミ)て何卒(なにとぞ)病氣(びやうき)速(すミやか)に全快(ぜんくわい)させん
と神仏(かミほとけ)を祈(いの)るに付(つき)て氏神(うじがミ)へさせ子(こ)も日参(につさん)初(はじ)めけるが或街(あるちまた)にて九(く)
次郎(じらう)に計(はか)らず出逢(であ)ふ不審(いぶか)しさせ子(こ)ハ下女(げぢよ)に言(い)ひ付(つけ)て《割書:下女杉》〽貴(あ)
殿(なた)ハ甞(なめる)さまじやァございませんか病氣(びやうき)といふて婚礼(こんれい)を延(のバ)して置(おい)て外出(ほかで)歩行(あるき)
てしま二十