翻刻
右丁
欄外 宇津ら権兵へ 十
本文
さるほどにおゆきは父八郎がうせしとききてきやうきのごとくとりみだしなきかなしむぞどうりなるかくてあるべきことならねば六人のしがいはその所にてとりおさめさつそくかまつらなる篠目(ささめ)の五郎をよびのぼせかたのごとくはうぶりぬ
五郎はいつにはじめぬ権兵衛がなさけをかんしんしさきだつては五郎がために金時にからきめ見せ此たびは父八郎がためにごづめとなりてちからをそへくれしことかさねがさねのおんふかしこれも又らいくわう組のけんぞくのしわざなりかれもとより其地御?がいろをあらそふこころよりわれわれをかたきのごとくおもひてかくのごとくあたをなすゐこん置くにふかしかつ此たび父のあたをそくざにうちゐひし大おんひとへにいもとが命のおやなれば御こころにはかなふまじけれどやどのつまとなしゐけらばかたじけなしとありければ権兵へかぎりなくよろこびてこれよりお雪をよびむかへけり
「何事もすくせのいんぐわとあきらめて此のち権兵へどのの大おんをわすれずをつととあがめたいせつにしやれ
「ここへくるまでおたつしやなととさまわたしゆへにひがうの御さいごあそばしてゆきとかへりはことかはりおこつをかごのみちづれとはあんまりつらいなさけない
「おもはぬさいなん吉事とかわるもハテおもはぬえんぐみてごんす
人物名 五 権 雪
左丁
ここによりみつ源次左衛門は四天王の内金時金左衛門をてうちやくされそのうへ此たび入湯のばしよにてけらい六人はたしあひのせつこれ又うづら権兵へにけちをつけられもつての外いきどほりけれどもゆうのうがうけつのうづら権兵へなればうかつのことをしいだしてはかへつてはじのもとひ也とてだてをつくされけるがあるときわたなべの惣五郎をもつて権兵へが方へししやをぞ立られけるつな五郎かみしもをちやくしてうはぎは禁札(きんさつ)と鬼のうでくろくもいなづまをそめいだせしだていしやうか用つばの大小金ごしらへをおびて権兵へが方へあんないしおにひげ左右にかきなでてへいふくして申けるは主人源次左衛門ことかねてよりき公のゆうもうをしやうびいたされいてより御ちかづきになりたきぞんじよりのところ一日一日とおそなはりやうやう今日ししやをもつて申入候なにとぞみやう日御酒いつこんさし上たくぞんずるゆへおちかづきのためこの方やしきへ御いでくだされたく御むづかしながらたのみぞんずるむねのべければ権兵へいちもつありとさとれども心よくうけひきていねいにへんとうしければ惣五郎よろこびて立かへりぬ
「これはこれはおししやごくっらういづれみやうにちぎよいえませう
「さつそくに御ききすみ下されつかひにまゐつた惣五郎めが身のめんぼめんぼくかたじけなうぞんじまするしからば権兵衛どのには明日ごくわうらいを御まちまうすでござらう
人物名 権 金