翻刻
【右丁】
【上】
今はむかし長ろくのころか
とよゑちごのくにせき川の
ほとりに氏井仁内と
いふらうにんありけり
わかかりしころはばんしう
つき月のわのいへにつかえ
三百石のちぎやうとり
なりしが三たびいさめて
身しりぞきたる
今のらうにんつまの
をり江が女筆(によひつ)のしなん
わづかのふでの命げに
おつとをすぐし
一子孝太郎廿一才
娘みさほ十八さい
ふたりともに
いたつてのかう〳〵もの
所がらとてちゞみのいとを
つむぎてわづかのあたへにかへ
おやこ四人まづしきなかにも
さまでくらうもなくくらしけり
仁内ある日せがれ孝太郎にむかひ
わればんしうをたちのきしはなんぢ
わづかに十才のとき今さらいふも
くりことながらごしゆじんゆりの助さま
わかげとはいひながらいんしゆにふけり
くにのおきてもおろそかゆへごけらいの
身としてよそめに見るはふちうの第一
たび〳〵おいさめ申たがかへつて此身の
おちどゝなりねいかんじやちの
【左下】
〽ヲヽ
よう
おぼへ
てじや
〽見事の
おんさ
もじ
をくり
下され
【図中】
【妻をり江の着物】を
【手習い本の文字】
下され
【左丁】
【中】
くせものにざんげんされ
なにごとなしに
ながのいとま
なんぢと
むすめ
み
さほが
てを
ひいて
はる〳〵この
ゑちごのくにへ
くだりしも
わづかのしるべを
一つのはしらゆびを
をりてかぞふれば
ことしでちやうど十一ねん
いぜんの事わがみはぶうんに
つきのわのらうにんで
くらすともなんぢは
なあるおいへに
ほうこうして
ふたゝび
氏井の
かめいを
たてゝ
くれい
「つぎへ
つゞく」【二行矩形で囲む】
【左上】
〽わたしは
これから
今川を
さらい
ます
よ
【右下】
〽おさ
がりを
すると
ぶんごの
おしせう
さまへ
ゆかねば
ならぬ
【下図中】
花明五嶺
春 十二才は■
琴
鳳
九才
よし
【左下看板中】
女筆指【南ヵ】