翻刻
【右丁】
嬰唖(あかこ)百十一日め朝(あさ)用ひおく事 真(まこと)に神(しん)と云ふへし
奇(き)といふへし数多(おゝく)功(こう)ある事うたかふへからす
啻(たゞ)此一 法(ほう)痘(ほうそう)の神薬(しんやく)といふへき歟痘 前(まへ)の用心(ようしん)
世上にはゆる時は雨天風吹日或は人群(ひとたち)の中 夜(や)分
他(よそ)へつれ行へからす遠路(とほきみち)へ行へからす又 寒暑(かんしよ)に
随ひ時候(じこう)をはらふ薬を用ひ置て小児さはりなき
時に痘(とう)の気(き)に感(かん)すれはみな吉なり陰陽兔血丸
の法本草綱目の文面にならひ唯(たゞ)兔(うさき)の血(ち)にて
ねり丸すれは吉と計思ふ徒ありて飼鳥(かいとり)屋の
【左丁】
兔或は食料(くひりやう)に用る《振り仮名:落兔|おちうさき》の血(ち)をとりて丸となし
兔血丸 製(せい)し得(ゑ)たると思へる者多し甚 相違(そうい)
せり製する人あらは尋問(たつねとふ)てこそすへきなり
○痘後は別而大切に養生(やうせう)すへし第一 食物(しよくもつ)に
あり美味(うまき)を食(しよく)せは余毒(よどく)をたすけて目を損(そん)し
甘味(あまみ)を多(おゝ)く食すれは疳(かん)の虫(むし)を動(とう)す後年(こうねん)癰(よう)
を発(はつ)し疳(かん)を煩(わつら)ふの類あり皆(みな)医(いしや)に問て喰(くは)しむ
へし痘後は何様の軽(かろ)きも七十五日は飲食(のみくひ)に
心を付る事専要なり