翻刻
【右丁】
○眼(め)を護(まもる)るは第一世上に紅粉(べに)を顔(かほ)にぬる事 古法(こほう)也
といへとも益(ゑき)なし見点(ほみせ)の部 位を考ふるに妨(さまたげ)あり
かならす用ゆへからす收靨(ふたむすび)【注】の時 睫毛(まつけ)をとぢてひらき
かぬるは鳥(とり)の羽音(はおと)を聞(きか)せてふとあけさせる抔よし
眼中(めのなか)痘入て眼 薄見(うすみ)へなる児(こ)は雀(すゞめ)の生血(いきち)を其 儘(まゝ)
絞(しぼ)り入るに一夜二夜にてもとの眼となる又眼中
翳障(めぼし)出るはやはり此血をさし曲垣《割書:かたの|内なり》に針三四分
おろす事あり三日ほとにて忽然(こつぜん)と愈(いゆ)此外 療治(りやうち)
数々(かず〳〵)あり医家(いしや)に寄(たのむ)るへし
【左丁】
○鼻(はな)に気を付べし序熱(じよねつ)の頃より鼻の垢(あか)をとり
おくへし乳呑子(ちのみこ)は貫膿(ほんうみ)の頃より鼻息(はないき)ふさかりて
乳をのみかぬるものなりまへかたより折々(おり〳〵)気を付て
鼻の中を見るへし又 重痘(おもき)にて鼻の辺(ほとり)潰爛(くつれたゞれ)して
鼻孔(はなのあな)閉(とづ)る者多し平愈(なほりて)後(のち)閉塞(とぢふさが)りたるあり貫膿
の頃の手当(てあて)によりて鼻孔(はなのあな)始終(しじう)閉(とぢ)さる手当あり
愈(いへ)ては猶(なを)全(まつた)くす外科医(けくわい)に託(まか)すべし《割書:予に》経験(こゝろみ)の
療治(りやうぢ)あり告(つぐ)へし乎
○掻破(かきやぶ)るは灌漿(みつもり)の頃あやまりてするわさ也 直(ぢき)に
【注 收靨(しゅうよう)は、疱瘡、瘡(かさ)、傷などがなおって、皮膚の表面が乾いた状態になること。】