翻刻
【右丁】
見点(けんてん)して天日(ひる)の光(ひかり)てなくては血色(けつしよく)の紅白(あかしろ)虚実(きよじつ)を
見わけかたきものとしるべし
○疱瘡神を祭るは穢汚(けかれ)不浄(ふじやう)を避(さけ)るためなり
痘児の居間は潔(きよ)くすべし神を鎮座(まつら)さしむる事
俗説(ぞく)といへとも傚(なら)ふてくるしかるまじ
○袖の長き肌着(はたき)じゆ半を着(き)せて左右の手の出ぬ
やうに袖の長 ̄サ三四寸も出し置(おく)なり小児 夢(む)中に
頭(かしら)面(かほ)を掻(かき)やぶらせぬための用心なり
○食事(しよくじ)に魚類は干肴(ひさかな)にても乳呑(ちのみ)子なれは親子
【左丁】
ともに無用なり酢(す)酒(さけ)麪(めん)類 餅(もち)類 油気(あふらけ)くさみからみ
菓実(くたもの)生冷(なま)の物みな忌(いむ)べし痘神の好物(すき)などゝ
云へる事 俗中(ぞく)に在(あり)かならす喰(くは)しむべからす
○痘の間(ま)へよしあしともに臭気(かざ)をいむへし懐中(ふところ)の
匂袋(にほひ)或(あるひ)は梅花油(はいくわあぶら)など用ゆへからす又見なれぬ人出入し
声高く人をしかり痘児を驚(おとろか)すへからす食物(しよくもつ)を煮(に)
茶をせんじ酒をあたゝむ事あるへからす最初(さいしよ)より
一間(ひとま)に極(きはめ)て外へつれ出ぬやうにすべし小児はよくくせに
なるものゆへ心得第一也又時節の寒(さむさ)暖(あたゝか)にしたかひ