東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

前訓 - 翻刻

前訓 - ページ 13

ページ: 13

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  むかし和(にほん)漢(から)ともに。人(ひと)の見めあしきを笑(わら)ひ。ちんば。かんだ   をわらひて。其(その)笑(わら)はれたる人(ひと)怒(はらだち)て。わらひたる人(ひと)を害(ころ)し。   剰(あまつさへ)家国(いゑくに)まで亡(ほろ)ぼしたる事(こと)ためし多(おほ)き事(こと)に候。   ちかく前(まへ)かた我(わ)が存(ぞん)じたる人(ひと)。濕(しつ)の病にて鼻(はな)をち   たるに。人(ひと)の見て笑(わら)ふを甚(はなはだ)無念(むねん)におもひ。根(ね)ふかく遺(い)   恨(こん)に思(おも)ひたる人(ひと)あり。誠(まこと)におそろしき事(こと)なり。又(また)人(ひと)の出入(ではいり)   するを見て笑(わら)ひ。意趣(いしゆ)におもはれ難(なん)に逢(あひ)たる   人(ひと)もあり。これ殊更(ことさら)女中(ぢよちう)に多(おほ)くある事(こと)なり。かたく   つゝしみて必(かならず)〳〵(〳〵)さやうのとき笑(わら)ふまじき事(こと)に候 一 女衆(おなこしう)にても。小童衆(でつちしう)にても。すべて御つかひ被成(なさて)候 人(ひと)を。  むごくし。別而(べつして)打(うち)たゝきなどは。かたくなされぬものにて候   我(わ)が身(み)をつめりて人(ひと)の痛(いた)さを知(し)れと申 事(こと)。ちかき手本(てほん)   にて候。つかはるゝ人(ひと)も皆(みな)人の子(こ)なり。然(しか)れは。われを   親(をや)のかあゆく思召(おぼしめさ)るゝと同(おな)じ事(こと)にて。又其(またその)つかはるゝ   人の親は其子(そのこ)を可愛(かあゆく)おもふなり。されは随分(ずいふん)憐愍(れんみん)                         《割書:あはれ| 》   ふかくいたはりてつかふべき事なり。其上(そのうへ)惣(そう)じて人を打(うち)   たゝきはかたくせぬものなり。其訳(そのわけ)は。むかし或(ある)田舎(いなか)の大(おぼ)   家(いゑ)にて。手代小童(てだいでつち)を呵(しか)るとて。何心(なにこゝろ)なくたゝきしに。   打所(うちところ)あしかりけるか。其(その)小童(でつち)速座(そくざ)に死(し)したるを。   病気(びやうき)にて死(し)したりと偽(うそ)をつき。かくし置(おき)たりしが。