東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

前訓 - 翻刻

前訓 - ページ 14

ページ: 14

翻刻

  其後(そのゝち)偽(うそ)あらはれ殺(ころ)したる手代(てだい)は死罪(しさい)になり。   主人(しゆじん)の家(いゑ)は。御追放(こつゐほう)になりしといふ物(もの)かたりを   きゝし事(こと)あり。たとひ禁忌所(きうしところ)を打(うた)ずとも。不図(ふと)   其人(そのひと)の死(し)する時節(じせつ)に打(うち)たゝき。仕合(しあい)さん事(こと)もはかり   かたし。是(これ)は人(ひと)の命(いのち)にかゝりあやまれは両方(りやうほう)とも。命(いのち)を   失(うしな)ふやうにもなる事(こと)なれは。きつと恐(おそ)れつゝしみて。   かりにも人(ひと)をうちたゝきなさるゝ事(こと)はきびしく   御たしなみなされせぬ事と御心得(こゝろへ)なさるべく候 一 衣服(きもの)食物(くいもの)に好(こ)事(ごと)を申さぬものにて候   大(おほ)かた成人(をとな)になりて悪性事(あくせうこと)に銭(ぜに)かねをつかひ。いろ〳〵   身(み)の奢(をごり)栄曜(ゑいよう)をしたがるやうになり。終(つゐ)には先祖(せんぞ)の家(いゑ)   をも売(うり)。非人(ひにん)乞食(こつじき)となり飢寒(うへこゞへ)し。のたれ死(しに)も。し   かねぬは。偏(ひとへ)に其(その)はじめ幼稚(ようち)の時(とき)。のみくひ着(き)ものゝ。   好事(こごと)をいひ習(なら)ひし。其(その)くせづきやみがたく。それが漸々(ぜん〳〵)と   あがりて上手(ぢやうづ)になりたるのにて候。然(しか)れは幼稚(ちいさき)時(とき)より   末(すへ)のつまらぬ事(こと)をしらぬものを下愚(あほう)と申候。たとひ表(うはべ)は   発明(はつめい)に見へても。としゆきて。後(のち)の難義(なんぎ)になる事(こと)を   知(し)らぬは。肝心(かんじん)の底(そこ)があほうなるゆへにて候。此(この)あほうに   ならぬやうに。つゝしみ肝要(かんやう)にて候 一 外(よそ)にて物(もの)をもらはゞ先持帰(まづもちかへ)りて。父様(とゝさま)母様(かゝさま)へ御あげ