翻刻
ゝ なさるべく候。又人(またひと)に何(なに)にても。物(もの)をかすにも。かるにも。遣(や)るも。
もらふも。皆其(みなその)度々(たび〳〵)に御両親様(ごりやうしんさま)へ。御たづねなされ。御ゆるし
をうけて取遣(とりやり)なさるべく候
これ聖人(せいじん)の御教(をんをしへ)に。孝行(こう〳〵)なる子(こ)は。私(わたくし)の財宝(ざいほう)といふ
ものはなし。皆々(みな〳〵)御両親(ごりやうしん)のものなりと知(し)れよと仰(をゝせ)
られて候。其訳(そのわけ)を御合点(ごがつてん)なさるべく候。元来(もとより)人々(にん〳〵)子(こ)
たるものは。我(わ)が身(み)とても御両親(ごりやうしん)のものにて。我身(わがみ)にてはなし。
されは。財宝(ざいほう)はいふに及(をよ)ばずと申 事(こと)を。御弁(をんわきまへ)へなさるべく候
右之通(みきのとふり)。能々(よく〳〵)御熟読(をんじゆくとく)なされ。御のみ込(こみ)。御おぼへ。御 勤(つとめ)。可被成(なさるべく)候
施印
口教(くきやう)四 《割書:これよりはじめ一より十までは先日あげをき候|そのつぎへ御とぢたし可被成候》
一 毎月一度(まいつきいちど)灸(やいと)をすゆる事(こと)これ御(こ)孝行(かう〳〵)のためと
御心(をんこゝろ)得なさるべく候
是(これ)は何故(なにゆへ)なれば毎月(まいつき)灸(やいと)を御(をん)すゑなされ候得ば
父様(とゝさま)母様(かゝさま)ともに此方(こち)の子(こ)は灸(やいと)をよくすゆる
ゆへ疫病(はやりやまひ)もうつるまじ食(しよく)あたりもあるまじと
安堵(あんど)なさるゝなり畢竟(ひつきやう)あつさはしばしの間(あいだ)にて
御両親(をんふたをや)の御心(をんこゝろ)の痛(いたみ)を易(やす)くし大(おほ)きに御孝行(ごかう〳〵)になり
申候 其上(そのうえ)孝行(かう〳〵)するかせぬかは此(この)灸(やいと)がよきためし
にて候も若(もし)灸(やいと)が御すゑなされともなく成(なり)候はゝ早(はや)