東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

前訓 - 翻刻

前訓 - ページ 16

ページ: 16

翻刻

  不孝者(ふかうもの)に成(なり)たりと御知(をんし)りなさるべく候 灸(やいと)をすゆる   は何でもなき事(こと)なりそれさへすゑぬからは外(ほか)の事(こと)   何(なに)として孝行(かう〳〵)なるべきを御(をん)あきらめなさるべく候 灸(やいと)は   此身(このみ)の病(やまひ)のためと存(ぞんじ)すゑ候へはきかぬ時(とき)はすゑぬ   様(やう)に成(なる)ものなり格別(かくべつ)のあたりさへなくば灸(やいと)をすゑて   きかずとも御両親様(をんふたをやさま)の御気(をんき)やすめとおぼしめし   御(をん)すゑなされ候がよく候 一 食物飲物(くいもののみもの)にて腹(はら)をそこなはぬやうにし又惣体身(またそうたいみ)を  怪我(けが)せぬやうに御用心(ごようじん)ななさるべく候   先(まつ)飲食(のみくい)にて腹(はら)をそこなふまじと思(おも)へばをのづから   いかもの食(ぐい)したり又(また)はあばれ食(くい)などはせぬなり   飲食(のみくい)は身命(しんみやう)をつなぐ大切(たいせつ)の宝(たから)にて礼義(えいぎ)のはじめ   これより発(おこ)るよしなればかまへて飲食(のみくい)の事(こと)に   不作法(ぶさほう)なるは大(おほ)きにあしき事(こと)にて其上(そのうへ)脾胃(ひゐ)を   損(そこな)ひ病者(やまひもの)と成(なる)なり又身(またみ)の怪我(けが)をせまじとたし   なめばこれもをのづから喧嘩(けんくは)口論(こうろん)の争(あらそ)ひはせぬもの   なり此身(このみ)はいふにおよばず髪爪(かみつめ)までも皆親(みなをや)の御身(をんみ)   の預(あづか)りものなればこれをすこしも毀(そこな)はぬが孝行(かう〳〵)の始(はじめ)   なりと孝経(かうきやう)にも説置(ときをか)せられて候 一 善悪(ぜんあく)とも報(むく)ひ来(く)るはのがれぬ事(こと)を御弁(をんわきま)へなさるべく候