東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

前訓 - 翻刻

前訓 - ページ 23

ページ: 23

翻刻

  大成徳(おほひなるとく)にして身(み)を修家(をさめいゑ)をとゝのふるの大事(だいじ)なれば   尊(たつと)きも卑(いやし)きも通(つう)じてせねばかなはぬ事なり。かやうの   大事(だいじ)を物知(ものし)らぬ人(ひと)は却(かへつ)て下品(げび)たるやうにおもひ衣服(いふく)   道具(だうぐ)もきらめき。身持(みもち)も花奢(をごり)たるを上品(じやうび)たりとおもふは   何(なに)の弁(わきま)へもなき故(ゆへ)にて甚(はなはだ)あさましき事(こと)なり。左様(さやう)の   人柄(ひとがら)は心(こゝろ)ある人には大(おほ)きに笑(わら)ひものとなるなり。恥(はづ)かしき   事(こと)にあらずや。真実(しんじつ)の上品(じやうび)たる事は道(みち)にかなひて厚等(こうとう)   なる故(ゆへ)花奢(をごり)を好(この)むめよりは下品(げび)たりと見ゆる事 多(おほ)   かるべし。此所(このところ)をよく〳〵弁(わきま)へて道(みち)にそむかぬやうにと   つゝしみ。善人(ぜんにん)の笑(わら)ひものにならぬやうにしたまへ 一女は嫁(か)して後(のち)は他念(たねん)なく。舅姑夫(しうとしうとめをつと)に事(つかふまつる)こと。是(これ)まで   《割書:よめいり| 》  父母(ちゝはゝ)につかへしごとくすべし。二度(ふたゝび)我(わが)うちへ戻(もど)るまじと  御つゝしみなさるゝが何(なに)より大切(たいせつ)の事(こと)にて候   凡(をよそ)女子は我(われ)が家(いゑ)といふものなきゆへ嫁(よめいり)するを帰(とつぐ)と   いひて帰(かへる)といふ字(じ)を書(かく)なり。是則夫(これすなはちをつと)の家(いゑ)を家(いゑ)と   するゆへ帰(かへる)といふなり。されば父母(ちゝはゝ)の家(いゑ)を出(いづ)る時門火(ときかどび)を   たきふたゝび父母の家(いゑ)へもどらぬといふ儀式(きしき)をするも   其(その)いはれなり。然(しか)れば一度嫁(いちどか)してのちは夫(をつと)を神(かみ)とも               《割書:よめいり| 》   仏(ほとけ)とも頼(たの)み。貴(さつと)び敬(うやま)ひこの夫(をつと)に見はなされては身(み)の   置所(をきどころ)なしと思(おも)ひ入夫(いりをつと)と同体(どうたい)の心(こゝろ)となりて。たとへば               《割書:をなじからだ| 》