翻刻
つれ〳〵草(ぐさ)。大和小学(やまとせうがく)のたぐひ。身(み)の教(をしへ)となる。假名文(かなぶみ)を
拝(はい)し見るべし。日用事多(にちようことおほ)きものなれば。さやうの書物(しよもつ)
をも拝(はい)し見れば気(き)のつかぬ事に気(き)のつく事もありて
大(おほ)きに利益(りやく)をうるものなり。女は陰(いん)を主(しゆ)とするゆへ
大(おほ)やう知恵(ちゑ)くらきもの多(おほ)し。故(ゆへ)に孔子(こうし)も女子(ぢよし)と小人(せうじん)とは
養(やしな)ひがたし近(ちか)づくればあなどり遠(とを)ざくれば怨(うら)むとの給ひ
又仏経(またぶつきやう)にも一切(いつさい)の江河(ごうが)は曲(まが)れり一切(いつさい)の女は必(かならず)かたましく
まがれたりとも説(とき)給へり。ちかくは徒然草(つれ〳〵ぐさ)にも。女の性(しやう)は皆(みな)
僻(ひがめ)り。人我(にんが)の相(さう)ふかく貪欲甚(とんよくはなはだ)しく。物(もの)の理(り)をしらず。只(たゞ)
まよひの方(かた)に心(こゝろ)もはやくうつり。言葉(ことば)もたくみに苦(くる)し
からぬ事をもとふ時(とき)はいはず。用意(ようい)あるかと見ればまた
あさましき事ども問(と)はずがたりにいひ出(いだ)す。ふかくたばかり
かざれる事は男の智恵(ちゑ)にもまさりたるかとおもへば其(その)こと
あとよりあらはるゝをしらず。すなほならずして拙(つたな)き
ものは女なりと。女中はつねにこれを見て恥(はづ)かしく思(おも)ひ。
日々心(にち〳〵こゝろ)をみがき給へ。心(こゝろ)はなどか賢(かしこき)より賢(かしこき)にもうつさば
うつらざらんとあれば。悪(あく)は少(すこ)しなるをもゆるさずあらため。
善(ぜん)は少(すこ)しなるをも怠(をこた)らず積(つみ)みかさねよとの教(をひ)へにしたがひ。
善心(ぜんしん)にすゝみ給はゞ終(つゐ)には神聖仏(しんせいぶつ)の冥加(みやうが)にかなひ。身(み)の
栄(さか)へはいふに及(をよ)ばず。子孫(しそん)もまた〳〵長久(ちやうきう)なるべし