東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

前訓 - 翻刻

前訓 - ページ 28

ページ: 28

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 からず心温和(こゝろをんくわ)なるべし唐(とう)の崔懿(さいい)の妻唐夫人(つまとうふじん)は姑(しうとめ)に事(つか)へて  孝行(かう〳〵)なり姑年老(しうとめとしをひ)て歯(は)こと〴〵くぬけければ食事用(しよくじもち)ひらるゝ  ことなりがたかりしに唐夫人毎朝堂(とうふじんまいてうとう)に登(のぼり)て我養育(わがよういく)の子(こ)は              《割書:あさごと ざしき| 》《割書:ゆき| 》 《割書:そだてつる| 》  おろそかににして其乳(そのち)をひたすら姑(しうとめ)にすはせまいらせられしなり  かるがゆへに姑数年(しうとめすねん)の間 飯粒(はんりう)を食(しよくし)たまはざれども一(いち)だんと              《割書:めしつぶ| 》 《割書:くひ| 》  そくさいなりしとなりされば姑天年終(しうとめてんねんをは)らんとする時末期(ときまつご)に  人々集(ひと〳〵あつま)れるに対(たい)していひ給へるは我年久(われとしひさ)しく嫁唐夫人(よめとうふじん)の         《割書:はなし| 》  厚恩(こうをん)をうけつゐに報(ほう)ずる事なし願(ねが)はくは唐夫人子(とうふじんこ)あり  我(われ)に事(つか)へられしごとく孝行(かう〳〵)にせば我家(わがいへ)ながくはんじやう  すべしとぞ申されけるとかや 清潔(せいけつ)    清潔(せいけつ)とはけがらはしき事(こと)を心(こゝろ)に受(うけ)いれず邪(よこしま)なる 《割書:きよく いさぎよし| 》ことをおもはず貞節(ていせつ)をかたく執守(とりまもる)をいふなり  然(しか)れば女(をんな)の身(み)はとりわけ男女(なんによ)のわかち行儀正(ぎやうぎたゞ)しくうたがひを  さけ人に恥(はち)しめをうけず身の取まはしきれいに心(ころ)すなほにて  少(すこ)しもうしろぐらき事をせぬものなり漢(かん)の鮑宣(ほうせん)が妻桓氏(つまくわんし)は  極(きはめ)て貞潔(ていけつ)なりし人なり嘗(かつ)て鮑宣貧身(ほうせんまつしきみ)にて操潔(みさほいさき)よく勤学(きんがく)                        《割書:こゝろだて| 》 《割書:がくもん| 》  怠(おこた)りなければ其師其志篤(そのしそのこゝろさしあつき)を感(かん)じ一人(ひとり)の女(むすめ)を彼鮑宣(かのほうせん)に妻(めあは)す  既(すて)に嫁(か)するの時其やうす女(をんな)の粧(よそほ)ひ冨(とみ)たる体(てい)にて衣類調度(いるひてうと)   《割書:よめいり| 》                      《割書:とうぐ| 》  美(び)をつくして従者(しうしや)なども夥(をびたゝ)しく目(め)を驚(おどろか)すばかりなり  《割書:けつこう|  》   《割書:とも| 》  鮑宣是(ほうせんこれ)を見てさらに悦(よろこ)ばずして婦(をんな)にいひけるは我(われ)もとより                  《割書:よめ| 》