東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

前訓 - 翻刻

前訓 - ページ 29

ページ: 29

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 貧賤(ひんせん)なる身なればかゝる華美(くはび)なる婦(をんな)を迎(むか)ゆべきにあらず又  《割書:まづしくいやしい| 》      《割書:はなやか| 》 《割書:よめ| 》  異方(ことかた)へも嫁(か)し給へといひければ桓氏(くわんし)こたへていひけるは元来我(もとよりわが)  《割書:ほか| 》  《割書:よめいり| 》  父鮑君貧(ちゝほうくんまつ)しき身にて徳(とく)をおさめ給へるを感(かん)じて我を君に   《割書:むこぎみ| 》  つかふまつらしめ給ふなりさればとにもかくにも君(きみ)の仰(をゝせ)にたがふ事  有(ある)べからずとて美服(びふく)を改(あらため)て短布(たんふ)の衣裳(いしやう)を着(き)多(おほく)の調度(てうど)其外         《割書:よききもの| 》  《割書:あらきぬの| 》 《割書:きもの| 》     《割書:どうぐ| 》  つき〳〵の侍女(じぢよ)も皆(みな)〳〵親里(をやざと)へ返(かへ)し鮑宣(ほうせん)とともにして小車(こぐるま)を       《割書:こしもと| 》  ひき姑(しうとめ)に孝行(かう〳〵)を尽し釣瓶(つるべ)を提(さげ)て手づから水を汲(くみ)飯(いひ)を炊(かし)き                          《割書:めし| 》 《割書:たき| 》  婦(をんな)の道を尽(つく)せり隣里(りんり)是(これ)を称(しやう)せざるはなしときゝ及(をよ)べり          《割書:あたりとなり| 》 《割書:ほめ| 》 不妬(ふご) 不妬(ふご)とは夫(をつと)に順(したが)ひて背(そむ)き悖(もとる)事なく我身を正(たゞ)しく 《割書:ねたまず| 》 して人を憐(あはれ)みたとひ夫(をつと)の愛(あい)する所の妾(しやう)ありとも夫をも                       《割書:めかけ| 》    そねみねたまず恨(うら)み怒(いか)る心(こゝろ)なきをいふなり  女(をんな)は心(こゝろ)せばくして嫉妬(しつと)ふかく夫に不足(ふそく)を思(おも)ふ人多(ひとおほ)しこれ女第一          《割書:ねたみそねみ| 》  のつゝしみなりたとひ外(ほか)に夫の愛(あい)する人ありともそれをも  ねたまず夫(をつと)に少しも不足をおもはず却(かへつ)て夫の心をはかりて共(とも)に  妾(しやう)を愛(あい)しいつくしむ心あれば夫(をつと)この節義(せつぎ)に恥(はじ)て妻(つま)を見かへず  《割書:めかけ| 》              《割書:みちたゞしき| 》  妾も亦此恵(またこのめくみ)をうけてかろしめ侮(あなと)る事あるまじ漢(かん)の明帝(めいてい)の  后馬皇后(きさきばくはうごう)は天性才徳(てんせいさいとく)すぐれさせ給ひ学(かく)に通(つう)じ行(をこな)ひ一つとして                    《割書:がくもん| 》 道にかなはずといふ事(こと)なし物(もの)ねたみの御心ましまさずして王子(をうじ)の うまれさせ給はぬ事をのみなげかせ給ひ才(さい)かしこく容(かたち)うる はしき女あれば帝(みかど)に奉り給ひもし御寵愛(ごてうあい)あればかぎりなく